【無題】12 (ページ34)

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月の側面 01(弟) ページ34

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Aに喜んでもらいたくて手に入れた
水族館のチケット。

早速誘ってみたら嬉しそうに笑ってくれた。

(かわいい･･･っ！)

楽しみにしてた水族館。
週末はあっという間に来た。

大きなガラス越しに魚を見つめる
Aの横顔から目が離せない。

Aはちっちゃいからツムジとか
ほっぺたとかよく見える。
それに長いまつ毛も。

｢あっハリセンボン！｣

｢わぁっ膨らんでる！｣

目の前でぷくーっと膨らむハリセンボン。
Aはそれを見てカワイイって言ってるけど
俺は拗ねて膨れっ面のAの方がカワイイと思う。

｢飲み物買ってくるね。
Aはオレンジジュースだよね｣

炭酸を飲めないAはいつも決まって
オレンジジュース。

一緒に行くって言ってくれたけど
歩かせるの悪いしって思って俺一人で買いに行く。

それが間違いだった。

戻ってきた俺の視界に入ったのは
Aに声を掛ける男2人。

そして耳に入ってくる会話。

｢ね、1人なら俺らと回ろうよ｣

｢彼氏と来てるんで｣

体の中心がブワッと熱くなる。

(なにAに話しかけてんの･･･)

そんな俺には気付きもしない男2人。
スッパリと切られ踵を返してこっちに向かってくる。

すぐに諦めて帰ってるけど･･･

(･･････人の彼女に何してんだよ)

俺とAのデート。
楽しい時間を邪魔されたような気がして
コメカミが一瞬チリッと焼ける。

(Aは俺だけのものなのに･･･)

でもAと目が合えば
そんな気持ちはどこかに吹き飛んでしまった。

｢Aお待たせ！ごめんな、レジが並んでて｣

ありがとうって笑った顔がもう可愛くてたまらなくて
小さな手を握る。

照れた様子で握り返してくれるAが愛しい。

(さっきは邪魔されたけど、もう邪魔されないように
離れないでおこう･･･)

そう心に決めて繋いだ手を握り直した。

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