浮かされる想い 01(兄) ページ31
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通い慣れた道。
何度も使った鍵でドアを開けて中に入る。
｢A、来たぞ｣
リビングを抜けて、寝室のドアを開けた。
｢あにじゃ、さん･･･｣
布団から顔を出したAの顔は赤く
眉を寄せたその表情から体調の悪さが伺える。
｢あぁ、いいから。寝てろ｣
起き上がろうとしたAの肩を押さえ
ベッドに戻す。
Aから連絡があったのは1時間ほど前。
普段体調が悪いなんて言わないこいつの事だから
よっぽど辛いんだろうと、ゼリーや飲み物を買って
すぐに駆けつけた。
｢無理すんな｣
｢･･･すみません｣
俺の言葉に申し訳なさそうにするA。
｢なんか欲しいものあるか？
ゼリーと飲み物は買ってきたぞ｣
｢ううん･･･大丈夫。･･･ありがとうございます｣
その言葉を聞いて、
とりあえず買ったものを冷蔵庫に入れようと
立ち上がる。
｢･･･！｣
裾が軽く引かれる感覚に振り返る。
ベッドから伸びた細い腕。
細い手が力なく俺の服の裾を掴んでいた。
｢･･････｣
何か言おうと口を開こうとした
Aの頭をくしゃくしゃと撫で
ベッドサイドに座り直す。
｢いつも我慢しすぎなんだよ、こんな時くらい甘えろ｣
｢･･････はい｣
それからしばらく頭を撫でていれば
次第に寝息が聞こえてきた。
｢･･････たく｣
苦笑してゆっくりとベッドから立ち上がり
ゼリーとドリンクを冷蔵庫にしまい
再び寝室に戻った。
薬をなんだ事もあるのか
来た時よりは良くなった気もする顔色に少し安堵。
布団から出た柔らかい手を握れば
少し握り返してくれる。
｢･･････たまには甘えてくれ｣
手を握ったまま体を屈めて少し熱い額にキスを落とした。
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作者名：そすんさー | 作成日時：2018年7月22日 23時
