【無題】09 (ページ3)

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家に帰るまでの間、Aは何も話さなかった。

俺はと言えば、海でAが言った言葉が
心に引っかかっている。

バイクが家の前について、Aが後ろから降りる。

｢兄者さん、またどこか連れて行ってくれる？｣

｢まぁ、予定なければな｣

｢･･････さっきのこと｣

切り出して欲しくない。

お互いの気持ちを知ってはいけない気がした。

Aとは年が離れている。

もっと年が近い相手を見つけるべきだ。

それに俺たちは昔から兄妹のように
親しんできたじゃないか。

今更それを･･････

｢兄者さん、ずっと1人だし。
彼女作らないし･･･モテるのに｣

その気になれないだけだ。

なのにAの顔がちらつくなんて･･･

｢だからね、私が学校卒業するまで
兄者さんが独り身だったら
かわいそうだから私がもらってあげるね｣

｢はぁ？！｣

斜め上からの目線と言葉に間抜けな声が漏れる。

｢え？聞こえなかったの？もう一回言おうか？
兄者さんが独り身だっ｢わかったわかった！｣

再び宣言しようとするAの言葉を遮る。

二回も言われてたまるか。

｢わかってるじゃん。約束だからね。
･･･あっ、またどこか連れてってくれるのも約束！｣

そう言ってAはくるりと踵を返した。

｢卒業したら、か･･･｣

俺なんかよりもずっと肝の座ったAの
後ろ姿を眺めれば思わずため息が漏れる。

だけどなぜか、俺の口元は笑っていた。

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