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前に一度、Aが彼氏と別れたと
泣きながら部屋に入ってきたことがあった。
頭を撫でながらなだめる俺の腕の中で
Aは泣きじゃくってた。
その時の体の細さや小ささが、俺を意識させたのだ。
「Aと出かけんの、久しぶりだな」
ぼんやりと呟いて青く澄んだ空を見上げた。
「兄者さーん、お待たせ」
門から手を振るAに手を振り返し
バイクのエンジンをかける。
Aは部活仲間らしき学生と一緒に出てきた。
「待った?」
「いや、別に」
「そっか」
A用にと持ってきていたヘルメットを渡せば
嬉しそうに被って後ろに跨る。
「どこ行きたいんだ?」
「うーん・・・海!海行こう、兄者さん」
その言葉に俺は海へとバイクを走らせた。
腰に回る細い腕が温かい。
「わー・・・風が気持ちいいね」
「そうだな」
防波堤に登ったAの髪が風でふわりと舞う。
俺は横に座ってぼんやりと海を眺めた。
「・・・兄者さんが今日迎えに来てくれた時ね」
ふと言葉を漏らすA。
「周りの友達が騒いでたんだ。あの人誰って」
「まぁ、そうだろうな」
「みんな兄者さんのことカッコイイねって言ってて
私、なんだか嬉しくって」
ふふ、とちいさく笑うA。
「だから私、みんなに言ったの。
誰にもあげないよ、って」
少しの間を置いて聞こえた言葉。
声は冗談を言ってそうな雰囲気じゃなかった。
ちらりと見上げた横顔が赤く見えたのは
日差しのせいなのか、それとも・・・。
「帰ろっか」
そう言って俺の方を向いたAは
いつもの笑顔を浮かべていた。
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作者名:そすんさー | 作成日時:2018年7月22日 23時