わたし《いちごみるくさんリク》【てつやside】 ページ34
扉の前に立って、大きく息を吐く。
もし、扉の向こうにいるのが俺たちの知らないまっさらなAであったとしても、俺たちはいつかこのことを笑い話にできるはず。
Aが出会ってきた人達の中で今Aに寄り添えるのは、これから先ずっと傍で見守ってやれるのは、きっと俺たちしかいないんだから。
手の震えを抑えて引き戸をゆっくり開いた。
その隙間から、ずっと聞きたかった大好きな笑い声が漏れる。
て「A」
すると笑い声はぴたりと止んで、傍にいた看護師さんに向けられていた笑顔がこちらに向きを変えた。
Aは看護師さんに視線を戻して、不思議そうな顔をしてから口を開いた。
「あの、」
「どちら様でしょうか…?」
覚えてるわけがないって自分に何度も言い聞かせたものの、心の奥ではどこか期待していた部分があって。
苦しかった。
誤魔化すために何とか発した声は想像以上に小さくて乾いていて、Aに届く前に空に消えてしまう。
どうしようかと回らない頭を働かせようとしていれば、横に並んだりょうが背中をぽんと叩いた。
り「僕たちAのお友達です、改めてよろしくね」
「…すみません、私何も覚えてなくて」
虫「ううん。こいつら変な奴らだけどよろしくね」
と「は!?お前もだろ!」
ゆ「うるせぇなぁ!病院だぞ!!」
て「…も〜笑」
看護師さんが『静かにお願いしますね』って笑いながら出ていって、病室には俺たちとAが残される。
突然、全員がぐちゃぐちゃになって口論しているのを眺めるAがくすりと笑った。
て「…え、笑った…?」
「いや、私の友達って楽しそうな人ばっかりだなって思ってつい…笑」
て「…う"ぅ…A〜」
り「やめなさい」
虫「マジのセクハラじゃん!」
ゆ「すごい速さだったよ皆」
と「体力半分消耗したわ…」
癖でAに飛びつこうとするも、メンバーに思い切り抑えられてふと我に返る。
嬉しい。
くしゃってした笑顔とか、俺たちがめちゃくちゃになってるのを見て笑っちゃうとことか、何も変わってなかった。
そんなAの笑顔で死ぬほど嬉しくなる俺たちも、前と何も変わってないなぁ。
「もっと、皆さんのこと教えてください」
て「…Aのこともね!」
「嬉しい、!」
へら、って笑ってみせると、Aも同じように笑ってみせた。
いつもと変わらない、大好きな、A。
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むめ(プロフ) - 優さん» ありがとうございます(;▽;)嬉しいです(;▽;)更新めちゃくちゃゆっくりですが、どうぞお付き合いください(;▽;) (2019年1月2日 20時) (レス) id: 31725d356a (このIDを非表示/違反報告)
優 - めちゃくちゃ好みの作品です!更新頑張って下さい!応援してます! (2018年12月28日 14時) (レス) id: b364b26750 (このIDを非表示/違反報告)
いちごみるく(プロフ) - むめさん» 全然大丈夫です! (2018年9月9日 21時) (レス) id: d9dc425cfd (このIDを非表示/違反報告)
むめ(プロフ) - いちごみるくさん» リク了解しました!!ドラマとかそんな感じでも大丈夫でしょうか...??( ´艸`) (2018年9月9日 16時) (レス) id: 31725d356a (このIDを非表示/違反報告)
いちごみるく(プロフ) - リクエストいいですか?てつやと2人で買い物に行って車が赤なのに突っ込んできて、てつやがひかれそうなところをたすけて代わりに引かれてしまう、そして記憶喪失になる的なのできますか?記憶はそのうち取り戻す的な感じで、お願いします! (2018年8月28日 20時) (レス) id: d9dc425cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むめ | 作成日時:2018年6月15日 1時