YouTuberの友達です。 5 【東海オンエア】

喧嘩【虫眼鏡side】 ページ46

「離して」



て「Aが説明するまで離さん」



「嫌」



て「なに？俺の目見て喋って」



Aの腕を掴んで離そうとしないてっちゃん。



ぎゅっと唇を真一文字に結んでてっちゃんから離れようとするA。



部屋には険悪なムードが漂っていて、僕はその状況をすぐに呑み込めず。



虫「りょうくん、」



り「あぁ、Aが親と喧嘩して家出したらしい」



り「それ俺ら知らなくて、全然連絡つかないからA捜したら、変なのに絡まれてたと」



虫「だから…」



り「さっきからずっとこの調子なんだよね」



りょうくんが腕を組んで二人を見上げた。



お互い引き下がる様子はなし。



実を言うと、Aとてっちゃんが今まで喧嘩したことはほぼ無い。



とにかく器の大きいてっちゃん、とにかく相手の気持ちを汲むのが上手いA。



どちらかが叱ることはあっても、言い返したりすることはほぼ無いからだ。



しかし今日はそういう風にはいかないようで、こんな感じ。



て「なぁ、連絡くらい寄越さん？」



「…」



て「返事しりん」



「…分からん」



て「俺らが心配してるのも？」



てっちゃんが、はぁ、と大きく溜息をついた。



なるべく感情を表に出さないようにしているのは分かるけど、若干震える低い声からは怒りが読み取れる。



Aもきっとそのことに気付いているのか、余計に口を開こうとしない。



取りあえず二人を離そうとりょうくんに目配せをして、りょうくんにはてっちゃんをお願いした。



Aを椅子に座らせて、僕もその正面に座った。



普段なら背もたれを使うところも、今は背筋をピンと伸ばしてAは俯いている。



虫「A、てっちゃんの言ってること、分かる？」



「…あんまり」



虫「そっか、そっか。てっちゃんはね、Aが心配なんだよ。」



虫「今まで家族同然に大切にしてきた友達が、どっかに行っちゃうのが」



「…」



部屋にまた沈黙が流れる。



どう和解させようかと頭を捻っていると、廊下のドアが開いててっちゃんがゆっくり顔を覗かせた。



て「Aごめん、俺本当に大人げなかった。」



て「俺の気持ちだけ一方的に押し付けて、Aの気持ちも聞かんと」



バカだなぁ、最初からそう言えばよかったのに。



Aの方に目を向けると、Aも目に涙をいっぱい溜めててっちゃんをじっと見つめている。



…さ、この辺で僕とりょうくんは身を引くとしようか。

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