悲しいときは《名無しさんリク》 ページ5
「お邪魔します〜」
虫「あ、今てっちゃん買い物行ったよ」
「そっか…て、何見てんすか兄さん」
虫「へへ、バレちゃった」
コーヒーを啜りながらテレビを眺める虫くん。
その視線の先には、私のユニホーム姿。
…私がソフトボールをしていた時だ。
頭の中を、懐かしさとか恥ずかしさとか色々な感情が駆け巡る。
「え、懐かしい〜!」
虫「Aが中学生の時のだよ。中学生って言っても、去年まで中学生だったか」
「でも何でてっちゃんがDVD持ってたん?」
虫「分かんない、なんかここに置いてあったの」
「てっちゃん変態」
虫「あの人が変態じゃなかったらもう変態の基準が狂ってる」
私も買ってきたジュースの蓋を開けて、虫くんの隣の椅子に座った。
椅子が床に引っかかって嫌な音を立ててしまったけれど、虫くんは食い入るように試合を見ている。
そんなにいいプレーしてたっけ?
まぁいいや、昔を振り返るのもたまにはいいかもしれない。
━━━━━━━━
『お願いします!』
バッターボックスに立ったのは、今よりずっと髪の毛が短くて色黒な私。
最終回の裏、ツーアウトでランナー無し、私たちのチームは2-0で負けている。
後攻の私たちにとって、絶望的な状況だった。
このとき私が恐ろしく冷静だったことを覚えている。
虫「あっ、」
「よくやった、私」
一球目、私が打ったボールは空高く弧を描き、外野の頭を越した。
ソロホームラン。
3年間続けてきた素振りの成果がこんな形で現れてくるなんて思いもしなかったなぁ。
その後も良い攻防戦が…とは行かず、私たちは惜しくも一点差で負けてしまった。
これが中学生最後のソフトボールの試合。
『応援ありがとうございました!』
泥まみれで顔をぐっしゃぐしゃにして頭を下げる私たちの姿を見て、そのときの気持ちを少し思い出す。
うるっと来て虫くんの方を見ると、虫くんは何故かタオルで顔を覆っていた。
「虫くん」
虫「汗が…いや別に泣いてないから」
「…青春って良いよね」
虫「ほんとね、あの頃のAが懐かしいよ」
「はー…虫くん、私もちょっと泣きたい」
虫「僕もやっぱ泣くよ」
数分後帰ってきたてっちゃんを、目をパンパンに腫らした虫くんと一緒にお出迎えしましたとさ。
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むめ(プロフ) - さほさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます( ;∀;)まだまだ頑張るのでよろしくお願いします!!( ;∀;) (2018年3月31日 13時) (レス) id: 31725d356a (このIDを非表示/違反報告)
さほ(プロフ) - おもしろいしなんかキュンとするしですごく良いです!!(語彙力) 同じ小説を作る者としてもすごく尊敬します(;;) (2018年3月31日 12時) (レス) id: 23ae1cebf1 (このIDを非表示/違反報告)
むめ(プロフ) - 咲夢さん» 返信遅くなっちゃって申し訳ないです。゚(゚´Д`゚)゚。 私もこの作品書きながら、「やべぇ書き終わるまで寝れねぇwww」ってなってました笑 これからもどうぞ駄作者をよろしくお願いします(*´ω`*) (2018年3月26日 1時) (レス) id: 31725d356a (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - むめさん» こちらこそ楽しませていただきました、、お疲れ様でした! (2018年3月11日 20時) (レス) id: 260c83828d (このIDを非表示/違反報告)
咲夢(プロフ) - めちゃくちゃ楽しまさせてもらいました!投稿される度に「あ、キター!」ってなってましたw4章(?)が始まったくらいに読み始めたのですが、「あ、これ寝れんわ」ってなってました!他の作品も頑張ってください! (2018年3月11日 18時) (レス) id: e6df225607 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むめ | 作成日時:2018年1月14日 17時