二十九話 あやめ ページ29
｢僕が人間だった頃に好きだった人との間にできた人間の子供…まさかここまで繁栄してたとは思わなかったけど｣
｢彼女が言ってたんだよね、男だろうが女だろうが花の名前をつけるって。僕の名前と同じ、ね｣
｢だからすぐにわかったよ。あやめが、僕の血縁だって｣
―――ああ、そっか。だからだ、私が椿さんに名前を呼ばれた時懐かしいと感じたのは。
すごく突拍子もないことを言われたような気もするけど、私はすんなりと受け入れられた。
私の事、嫌いなんかじゃなかった。
その安心が勝って、なんだか今はとても心がおだやかだ。
私の御先祖様。私が生まれたのは、あなたのおかげ。今ここにいる私は、あなたと同じ。
｢…そっか｣
｢聞きたくなかった？こんな僕が祖先でガッカリした？人外と血縁だなんて嫌だった？｣
｢ううん｣
��嬉しい��
そう言えば、椿さんは本当にびっくりしたような顔をした。
こんなにも優しくて、仲間思いで、綺麗な人が私の御先祖様だったなんて嬉しい。
何百年と時を超えて、こうした巡り合わせがあるなんて、本当に事実は小説よりも奇なりだ。
椿さんは、ふわりと優しく笑って、私を抱きしめた。子供にやるように、優しく優しく頭を撫でられる。
あったかい。この人の胸はこんなにもあったかい。
｢―――僕の愛しいこども｣
椿さんがたとえ何者だったとしても、椿さんは私だけの――
すると急に眠気が襲ってきて、そのまま椿さんの腕の中で眠ってしまった。よく分からないけど椿さんの力、なのかな。
＊
朝目が覚めると自宅のベッドの上だった。
ずっと悩んでいた不安がなくなって清々しい気持ちだけど、一抹の心配が私の中に広がる。
真実を知ってしまった私たちは、はたして前と同じようにいられるのか。
椿さんはどこか遠くに行ってしまったりしないか。
そんな不安が、残った。
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南条(プロフ) - 彩弥 Ayamiさん» コメントありがとうございます！気に入って頂けて嬉しいです。更新頑張って行こうと思います〜！ (2020年11月4日 23時) (
レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
彩弥 Ayami(プロフ) - コメント失礼します…。やっぱり椿は可愛くてかっこいいですよね…♪ニヤニヤしながら読ませていただきました(笑)更新楽しみにしてますね！ (2020年10月31日 20時) (レス) id: ea9a1583d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2020年6月3日 11時
