二話 かきつばた ページ2
人の姿でちょーるをチュウチュウ吸う光景は、なんだかあまり見ていられない。
とにかく重たいので、どいてもらう。
「ごめんごめん」
今どき珍しい着物と下駄を着こなし、何故かそこにサングラスをかけた、怪しいお兄さん。ノリでツッコミを入れてしまったけれど、色々信じられない。
「本当にさっきの狐?ですか?」
「うん?そうだよ。疲れて動けなかったから、ありがとうね」
「信じられない…日本昔ばなしみたいな…」
「あはっ事実は小説よりも奇なり!」
愉快そうに笑う青年に、調子が狂う。こんなイケメンが狐のはずがないっ!
「助けてくれたお礼になにかひとつ願いを叶えてあげようか」
「えっ?妖怪ってそんなことできるんですか?!」
「妖怪って…君ね……」
「じゃあお名前教えてください!」
面を食らったような顔でこちらを見る。変な願いだったろうか?叶えられる範囲での答えなんだけどな。
すると大声で、いきなり笑い出す。
え、そんな笑う?
と思えば最後には面白くないと言って真顔に戻る。
おかしな人だな…
「…いいよ。僕は椿。何百年って生きてる――狐だよ」
「椿さん…。私はあやめです!」
椿さんは私の名前を聞くと、じっと私の顔みた。そして小さな風が吹いてザワザワと草たちがさざめき合う。
「――あやめ」
どうしてか、椿さんに自分の名前を呼ばれると、脳裏にサングラスのかけていない椿さんがこちらに笑いかける姿が一瞬見えた。
そしてそれと同時に、胸の奥できゅうっと切なくなった。
私はこの感覚の意味が全くわからなかった。
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南条(プロフ) - 彩弥 Ayamiさん» コメントありがとうございます!気に入って頂けて嬉しいです。更新頑張って行こうと思います〜! (2020年11月4日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
彩弥 Ayami(プロフ) - コメント失礼します…。やっぱり椿は可愛くてかっこいいですよね…♪ニヤニヤしながら読ませていただきました(笑)更新楽しみにしてますね! (2020年10月31日 20時) (レス) id: ea9a1583d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2020年6月3日 11時