偽の愛言葉 (ページ3)

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夢ページ3

＿パチパチという音が耳元で聞こえる。＿

ゆっくりと目を開ける。まだ寝ぼけているのか、前がよく見えない。目を擦って何度か瞬きをする。そして、目の前に広がっていた景色は

｢か、じ…？｣

＿火に包まれた、見覚えのある部屋だった。
当たり前だ。住んでいる部屋なのだから。でも、この部屋にはもう住んでいない。という事はこれは"夢"ということになる。そのことに気づいたら、次に何をするべきかはすぐ分かった。布団を剥ぎ取り、襖の前まで這って行き、扉を叩く。昔のように。当時を再現するように。

｢＿開けてください！！父上、母上！！火が…火がすぐそこまで…っ！｣

ドンドンドン、と襖を叩く。叩いていく度に襖が凹んでいく。このまま続けていれば穴が開き、そこから出られる。そう考え必死に襖を叩いた。

…が、穴は開かなかった。

それどころか、火が自分を包もうとし始めている。息を吸うと喉が痛くなり、息が少しづつ出来なくなる。それでも必死になって襖を叩いた。
"出してくれ" "助けてくれ"
何度も何度も叫んだが襖は開かないし、助けは来ない。少しでも火から逃げようと立て膝をして助けを求めたが、人の気配も感じない。そしてそのままペタリ、と座り、女の子座りのような体制になる。どうするべきかと考えた時、足元に違和感を感じた。

ふと見ると、右足が火に包まれていた。

もちろんこれは夢なので痛みは感じないが、当時の痛みを思い出してしまい、夢なのに痛みを感じてしまう。こうなるともう動けなかった。
足を包んでいた火は徐々に徐々に体へ近づいていく。

｢＿っああああああああ！！！｣

熱い。痛い。
頭の中がこの二つで埋め尽くされる。だが、どうすることも出来ず、穴の開かない襖をただ叩いていた。開いてくれ、開いてくれと願うが開く気配も、壊れることもない。さすがは夢と言ったところか。
あぁそうだ。これは夢なんだ。現実であって、現実じゃないんだ。そう気づくと今度は違う意味で襖を叩く。

｢はやく…っ！はやく覚めてくれ…！！！｣

熱い。覚めろ。痛い。覚めろ。
この言葉だけが頭を支配する。その間にも火はどんどん体を侵略していき、遂に左半身を火が包んでしまった。そうなると襖はもう叩けない。ただ床に転がり落ち、妄想の痛みに耐える。

覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろさめろさめろさめろさめろサメロサメロサメロサメロサメロ！！

そんな願いは叶わず、遂に火は首を包み、最後に顔を包んで、一つの火だるまを作った。