【Free!】林檎【山崎宗介】 (ページ33)

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第30話ページ33

ー優姫sideー

どうしよ…逃げて来ちゃった

「はあっ、はぁっ…はぁ…」

すごく息が切れる

Aみたいに足速くないし、体力も無いから…

誰にも相談せず私の気持ちを伝えた

Aにも、言わなかった

……実は、山崎さんとさっきの場所へ行く時…Aと真琴先輩が見えた

後ろを振り返った時に、見えたんだ

仲良さそうに歩いてた

相合傘で、理想の恋人像そのものだった

…返事を聞くのが怖くて、先延ばししちゃった

しかもバレンタインに

………これで断られたらとんだマヌケだよね

「どうしよ…」

溢れてくる涙で、前が見えない

今まで、男の人に告白なんてした事無かった

好きだけど、告げられないままで別れて、また好きな人を作った

けど、山崎さんは違う

初めて、絶対に結ばれたいと思った

だから誰にも頼らずに言った

…ポタッ

涙が垂れるけど、雨と混ざって分かんなかった

分からなくした

ーAsideー

ガチャッ

兄さん帰って来た！

「おかえり……？」

「おう」

…なんかあったのかな

元気が無い、気がする

「買い物に行ってたの？」

「ああ、飲みモン買いに行ってた」

飲み物持ってないのに…？

「…飲んだんだよ、すぐ」

「ふーん」

…顔に出てたかな

まるで私の思ってる事を見透かした
かのように

「…私、もう寝るね。疲れちゃったみたい」

電車の中でも眠かったし、実際真琴先輩の家で寝ちゃったし…

これが初デートだったら終わりだったよね、絶対←

…長い付き合いって言っても後少しで一年ってほどの…どっちかって言うと短いよね

「………おやすみ…？」

ガチャッ…バタン

兄さん、本当にどうしたんだろ

心配だけど…あんな様子じゃあ何も聞けない

ー宗介sideー

「…はあ」

誰もいないリビングに溜息が響く

返事は決まってる

悩む必要なんて無い

…だけど何か引っかかる

Aの顔を見て、思い出そうとしたけど…思い出せなかった

頭ん中の奥に、引っかかってるその事

思い出したらきっと、迷いは吹っ切れるはずなんだ

ー部屋ー

電気が消えてる…A、寝たんだな

「…っと」

ベッドの上の段に顔を覗かせた

寝てる…

寝顔は昔と変わらないままだな

昔はよく泣いてた

走り回ってつまづいたりした時にはいつも俺がなだめてた

一年遅く産まれた妹だけど、お袋や親父よりも過ごした時間が長い

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…だから、こんなに愛おしいと思えるのか

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