【Free!】林檎【山崎宗介】 (ページ32)

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第29話ページ32

ーAsideー

「…ただいま」

九時前かぁ…兄さん起きてるかな

ガチャッ

トン…トン

「…ん？」

机の上に…紙が置いてある

ペラッ

「…出かけて来る？何で？」

っていうか、いつ出かけたんだろ

飲み物買いに行っただけだと思うけど…

コートをクローゼットにかけながらそんな事を思う

一応、真琴先輩の家でご飯ご馳走になるって連絡したけど…

兄さん何か食べたかな

「………あ」

チャーハン作ったんだ

フライパンにちょっと残ってる

お茶も置きっぱだし…

飲んで良いかな

「……ん、はぁ」

冷たい…

ん？ちょっと待って

お茶残ってるのに飲み物買いに行く必要ある？

「んー…」

まあ、兄さんの事だから分かんないか

それにしても、真琴先輩とあんな話すると思わなかった

…いつか、話さなきゃってずっと思ってた

けど、話す機会なんて作れなかった

だから……良かったのかな

今日は、簡単に東京に行く、追いかけるなんて言ったけど

そんな事誰にも分からない

確実じゃないから、不安になるんだ

ー宗介sideー

「…っ、好きです」

最近やっと名前を覚えた、江野上にそう言われた

「勿論、山崎さんの事が…男の人として…」

「…そうか」

びっくりして、そんな返事しか返せなかった

空は土砂降りで、今は九時前

ここは屋根があるけど…いや、わざわざ屋根がある所に来た

こいつに呼び出されて、連れ出されて

「一目惚れ…だったんです」

俯きながら言った

「それからずっと貴方の事、考えてて…会う度に好きになっていった」

告白の返事は出てる

悩む事は何も無い

スクッ

そんな事を考えながらボーッとしたままでいたら江野上が立ち上がった

「今日は、返事はいいです…！6日後の…バレンタインに、また会って下さい」

…こういうのって普通、今すぐ聞きたいもんじゃねえの？

待ってても返事は変わらねえ

勿論…

「考えて、みて下さい…っ」

俺に背を向けて、江野上は走り出した

傘もささず、濡れながら走ってた

その背中を見つめては、ボーッとして…

俺は何をしてるのか分からなくなった

まさか、妹の友達から告白されるなんて思わないだろ

…そろそろAも帰って来た頃か

橘ん家で晩飯食べるって連絡が来た

あいつらは良いよな、俺に比べりゃ気楽だ

上手くいけば、結婚すると思う

互いの親同士、二人の関係は知ってる

親父とお袋だって、橘の事は意外と気に入ってるみたいだった

まあ、阻む壁が無ければ…だけどな