第28話 ページ31
「もうそろそろ、帰ろうか」
結局Aはここで晩御飯を食べた
母さんたちとも会話が弾んでて、いつもと違って賑やかだった
そのあとも蘭と蓮にせがまれて一緒に遊んでた所、二人とも疲れて寝た
「あ、はい…すみませんいつまでも」
「俺ん家は大丈夫だけど…山崎くんとか心配すると思うから」
「そうですね」
ー外ー
「うわー、土砂降りだ」
バサッ
「傘、一つで良いですよ」
「え…っ、それって相合が…」
「ち、違います!…真琴先輩が帰る時…迷惑になるかと思って…」
「…ふふっ、ありがとう」
自覚してなくても嬉しい
「私、持ちましょうか?」
「いいよ、俺のが背高いだろ」
「…じゃあお言葉に甘えて」
そう言ってAは俺の隣にぴったりとくっ付いて、歩き始めた
ー数分後ー
「真琴先輩、東京に行くんですよね」
今日二度目だね、その質問
やっぱりAも考えてるんだ
…俺もすっごい考えてるけど…
「行くよ。……でも、Aとは会えなくなるかな?」
雨音を聞きながら、ゆっくりAを見た
「…そうかも…ですね」
俯いたまま、そう言った
「でもね、俺…Aと別れたくない」
「……………私も、です」
…少し、間があった
「勿論毎日会いたいとは言ってないけど…このままの関係でいたい」
いつか話す時が来ると思ってた
別れるか、続けるか
俺の言葉は本心だから、迷いは無い
「Aは…どう?」
正直言って、今は倦怠期かもしれない
俺ばっかりが好きな気がする
……でも、そんな事覚悟してた
告白して、付き合うってなった時からずっと
「勿論、私も別れたくないです」
…本当に?
「でも…岩鳶から東京って、すごく遠いですし…これから先、どうなるか分からない」
「…そんな事、俺も分かってる。でも、Aと一緒にいたい」
Aの顔を見るけど、まだ俯いてた
俺は…どうすれば良い
「そんなの…私だって一緒です!」
必死な顔で、俺に訴えかけて来た
…信じても、良いのかな
「すみません……でも、あの…」
「何?」
濡れそうなAの肩を、傘でカバーしながら聞く
「一年!一年間だけ待ってて下さい
私も卒業したら東京に行きます」
「一年?」
「はい、絶対に」
Aの真剣な目を見たら、何もかも吹っ飛んだ
悩みとかどうでも良くなって、嬉しさだけが増していく
「…信じるよ、その言葉」
裏切る事なんて、無いと思う
絶対に無い事は無いけど…ね
48人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ