其ノ漆 ページ9
「あ若!こんなところにいらっしゃったんですね!もうそろそろ公務に戻られた方がよろしいのでは…」
金髪の男の人が私に気付き会釈する。
「おや、もうこんな時間ですか。確かにもう公務に戻った方が良いですね」
「あでは私たちはこれで…。遊び相手になって下さりありがとうございました。楽しかったです」
軽くお辞儀をしてその場を立つ。
「しゃぶぎょーのお兄ちゃん、次は絶対倒すからね!またねー!」
「また遊んでねー!」
みんなそれぞれ挨拶をし、神里屋敷を出る。
「Aさん。今日は私も楽しかったですよ。なかなか子供たちと遊ぶことはないのでいい機会でした。それではまた」
社奉行様は見送りに神里屋敷の前まで出てきてくれた。
子供たちは大きく手を振り、私はお辞儀をして帰路についた。
みんなとても満足していて本当に社奉行様には感謝してもしきれない。
その日の夜、私は布団の中で今日あったことを思い出していた。
『愛らしいと思いますよ』
社奉行様の言葉が頭に浮かんできてガバッと布団を被る。
「あれはお世辞…!お世辞なのよ…!」
必死に自分に言い聞かせる。
でもお世辞とは分かっていても男の人に愛らしいと言われたことなどないのだ。
「社奉行様は誰にでもあんなお世辞を言うのかしら…」
あの方、少しは自分の顔の良さを自覚した方が良いと思うわ…
あの顔で愛らしいなんて言われて照れない女性はいないもの。
そもそも私に対する褒め言葉は美人だね、というものが多かった。
勿論褒められることは嬉しいことだけど美人は怒ると怖いだとか、気が強いだとかなにかとマイナスなイメージがある。
だから可愛い顔をしているね、と褒められる事が多い妹のような顔に産まれたかったなと思うことも少なくなかった。
愛らしいって可愛いってことじゃない、私は似合わない言葉なのに…
「お世辞に対して嬉しいと思ってしまうなんて…おかしいわ」
私はそう呟き眠りについた。
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椿(プロフ) - ありがとうございます〜!更新頑張ります! (8月6日 14時) (レス) id: bc50e09104 (このIDを非表示/違反報告)
夜空ゆーたお(プロフ) - 続き楽しみです! (8月5日 1時) (レス) @page20 id: 9a1d60d013 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2023年7月16日 19時