その雪寄草に、口付けを。 / 神里綾人 (ページ7)

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其ノ伍ページ7

「しゃぶぎょーのお兄ちゃんのオニカブトムシおっきい〜！」

社奉行様が見せてくれたオニカブトムシは私たちがさっき捕まえたどのオニカブトムシよりも大きかった

「こんなに大きいオニカブトムシがいるんですね…！」

オニカブトムシに近づいてよく見ようとすると社奉行様がふふっと笑った。

「…っなんですか…！」

笑われた恥ずかしさから少し睨んでしまった。

「いえ、随分と興味津々だなと思いまして。普段オニカブトムシを見ることはないのですか？」

「見ることがないというか…虫相撲もしたことがないですし、普段気にすることがない、が正しいでしょうか。」

そう言ってから少し下を向いて付け足す。

「………オニカブトムシに興味津々なんて子供っぽいとか思われましたか」

社奉行様は少し驚いた表情してまた少し笑った。

「そうですね…。愛らしいなと思いましたよ」

…愛らしい？

「へ！？えな、何をおっしゃっているのですか！？」

予想外の返答に思わず顔を赤らめる。

「ふふ、感じたことを言っただけですよ。それに虫相撲は決して子供の遊びではありませんし、オニカブトムシが子供っぽいなんてこともありません。私も一斗くんと会った時はよく虫相撲をしますよ」

社奉行様は笑顔でそう言った。

感じたことって………。

あ、これってもしかしてお世辞！？

照れた私が馬鹿みたいだわ…。

返す言葉が思いつかずそのまま口を紡ぐ。

それに一斗くんって。虫相撲の話になるとこの人がよく出てくるのは何故なんだろう。

社奉行様が荒瀧派の親分と仲がいいとは知らなかった。

「さて。ではそろそろ虫相撲をしましょう。私のこの大きいオニカブトムシに立ち向かう勇者は誰でしょうか？」

社奉行様が不敵な笑みを浮かべると子供たちが我こそはとたくさん名乗り出る。

「ふふ、元気ですね。では順番を決めてください。みんな仲良くですよ」

すると子供たちは仲良く順番決めじゃんけんを始めた。