その雪寄草に、口付けを。 / 神里綾人 (ページ41)

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其ノ参拾捌ページ41

「う〜ん…寒…」

いつもより空気がひんやりとしていて目が覚める。

暫くモゾモゾと布団で動いているうちにふと思い出し、期待の念を抱いて外を見に行く。

「わぁ…真っ白ね。綺麗だわ」

ついに初雪だ。

かなり積もっているから夜中からずっと降っていたようだ。

私がいつもより寒いと感じた朝は大体雪が降っている。

子供の頃からいち早く雪を察しては外へ出て走り回っていた。

「…その度に怒られてたっけ」

流石にもう走り回るような年齢じゃないが、なんだか懐かしくなり雪に足を踏み入れてみる。

本来はこんな薄着で居るべきな気温では無いけれど氷の神の目を授かったおかげかこの寒さが心地いい。

真っ白な地面に私の足跡だけが残されている。

庭から見える城下町も白に染っている。

そうだ、雪うさぎでも作ろうかしら。

どうせ綾人さんはもう出てるんだし他の人たちはまだ起きない。

端の方に積もる雪を手に取り形を作る。

「ふんふんふ〜ん♪」

鼻歌を歌いながら1匹のうさぎを作り上げる。

2匹並べちゃおう〜ともう一度雪を手に取る。

「おや？何やら楽しそうなことをしているね」

「綾人さん!?あっ」

驚いて大体の形が出来ていたうさぎを落としてしまう。

「おはようA」

「お、おはよう綾人さん。今日は遅いのね」

綾人さんは挨拶をして私の隣へ来る。

「今日は久しぶりに少し朝が遅いんだ。これは…雪うさぎかい？」

「えぇ。その、雪が降っていたから…」

うぅ、遊んでいたのをみられて恥ずかしい…。

「じゃあ私も一緒に作ろうかな」

そう言って綾人さんは雪を手に取り形を作り始めた。

「ちょっ素手で雪なんて触ったら冷たいわ」

「Aだってやっているだろう？」

「私は冷たいのは平気なの。そんな薄着じゃ風邪をひいてしまうわ。上になにか羽織らないと…」

ただでさえ今は疲れているだろうにと眉をひそめる。

「ふむ、そうだね。じゃあAが暖めておくれ」

「へ？」

綾人さんは出来上がったうさぎを私の作ったうさぎの隣に置いて私の腕を引き、傍にあった段差へ腰掛けた。

「どうかしたの？」

無言な綾人さんの意図が分からず困惑する。

綾人さんは何も喋らずに私の胸に顔を埋めた。