その雪寄草に、口付けを。 / 神里綾人 (ページ26)

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其ノ弐拾肆ページ26

私は神里様をどう思っているのか。

きっと神里様が聞きたいのは異性として、1人の男性として神里様の事を好きかどうかということ。

私は神里様と話すのが好き。

もっと沢山話したいし、一緒に居たい。

そして神里様と露の婚約話を聞いた時、私はショックを受けた。

今まで考えたことはなかったけれど恐らく私は……

「そんなにすぐ答えは求めないので少し、考えてみてください」

神里様は一言言うと部屋から出ていこうとする。

「あ、あの…！」

伝えたい。そう思った私は声が出ていた。

「その、神里様をどう思っているか、という質問の答え、なんですけど」

「そんなに急がなくても大丈夫ですよ？」

すぐに返事が来るということは悪い返事だと思ったのか神里様は少し悲しそうな笑みを浮かべた。

「あ、違って…！」

神里様の表情に焦って否定する。

「私も、神里様のことが好き、です、多分…」

自分の想いを口にするのは想像以上に恥ずかしく、頬が火照るのを感じた。

「…多分って。その気持ちが勘違いだったらどうするのですか？」

神里様は嬉しそうに笑った。

神里様の感情を全面的に出すような表情はあまり見る機会が無かったからか、その笑顔が可愛いななんて思った。

「こ、恋とかしたことがないので…。でも、きっとこの気持ちが恋なんだろうなって思います」

やっと自覚出来たこの気持ちを噛み締めながら言う。

すると私の傷が痛まないように優しく抱きしめられ、神里様の優しさを感じる。

「私、結婚相手はお父様が決めると思っていました。恋愛結婚なんて名家の娘には出来ないって」

そう言いながら神里様の背中に手を回す。

「でもお父様は私が成人しても縁談を持ってきて下さらなかった。だから結婚は半ば諦めていたんです」

「私はAさんがもし既に結婚していたらどうしようかと不安でしたよ」

抱きしめる力が少しだけ強くなる。

「今まで私に縁談が無かったのは神里様に出会うためだったんですね」

私は神里様の胸の中でえへへと笑った。

二人の間に流れる空気が幸せで、ずっとこうして居たいと思った。