其ノ弐拾参 ページ25
「神里家に来る…?」
言葉の意味が理解出来ず首を傾げる。
「使用人として雇ってくれるだと!良かったじゃないか!」
お父様が私に向かって少し見下したように言う。
「使用人ですか…?私家事とか得意では無いのですけれど…」
不安な表情を浮かべると神里様は「違いますよ」と訂正した。
「少し言い方が伝わりにくかったですね、言い直します。神里家に、嫁に来ませんか?」
「よ、嫁!?」
神里様の口から出た言葉が想定外過ぎてつい大きな声が出る。
「嫁だと!?」
お父様も驚いて声を上げる。
「ええ。元々、Aさんに私の妻になって欲しかったんです。だからAさんが志倉家の長女と知った時は驚きました。志倉家との縁談は断る予定でしたからどうするか悩みましたよ」
いきなりの情報量に私は理解が追いつかない。
「か、神里様の妻なんて私には務まりません!何故私なのですか!?」
混乱してそう言うと神里様はいたずらっぽく笑った。
「何故って、貴方のことが好きだからに決まっているでしょう?」
す、好き!?神里様が!?私のことを!?
「志倉家と関係を持ちたくないのではなかったのか!?」
お父様が怒ったように言う。
「Aさんとは縁を切るのではなかったのですか?言い方は悪いですが、私にとってはそれが好都合なんですよ」
まさか神里様はこうなることを予測していたの…?
驚いて神里様を見つめる。
「ぐ…!少し考えさせろ!」
お父様はそれだけ言うとまた大きな足音を立てて帰ってしまった。
「おや、行ってしまいました」
神里様は「短気な人ですね」と呟き、開けっ放しにされている襖を閉める。
「あ、あの…神里様…」
話の続きをしたくて声をかける。
「ああ、Aさん。断りにくい状況で言ってしまってすみません。もし他に想い人がいるのでしたら断ってくれて構いませんよ、志倉様は私が何とかしますので」
神里様はそう言って優しく笑う。
他に想い人…そんなこと言われたって私は神里様以外の男性と話す機会なんて…
「Aさん」
「は、はい」
目をみつめて名前を呼ばれ、背筋が伸びる。
「嫁に来る来ないではなく、私のことをどう思っているかを聞いてもいいですか?」
神里様はしっかり私と向き合ってそう言った。
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椿(プロフ) - ありがとうございます〜!更新頑張ります! (8月6日 14時) (レス) id: bc50e09104 (このIDを非表示/違反報告)
夜空ゆーたお(プロフ) - 続き楽しみです! (8月5日 1時) (レス) @page20 id: 9a1d60d013 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2023年7月16日 19時