其ノ弐拾壱 ページ23
目を開けると私は地面に転がっていた。
口は布で覆われいて声を出せず、手首を縛られ身動きが出来ない状況は助けを求めるにはかなり絶望的だ。
しかも出血が多く体に力が入らない。
今の私じゃ手首の縄を取ることすら出来ないし、薄暗くてここがどこかも分からない。
ファデュイの目的も分からないし。
このまま死んでしまうのかしら…。
だんだん考える気力すらなくなってきて出来るだけ体力を使わないようにしようとまた目を閉じた。
何やら騒がしい音が聞こえてきて目を開けるとファデュイが誰かと戦っていた。
「蒼流水影」
そう言って刀を構えていたのは神里様だった。
1対多数で圧倒的不利なのに目にも止まらぬ速さの剣術でファデュイはどんどん倒されていく。
「くっ!」
最後に残ったデットエージェントが素早い動きで私の隣に移動してくる。
「人質がいるのによく真正面から来れたものだな!」
グイッと私の腕をつかんで無理やり体を起こして首元に刃を向ける。
「っ…!」
肩の傷が痛み思わず顔を歪める。
「Aさんに触れないでください」
神里様は今まで聞いたことの無い低い冷たい声でそう言うと隣にいたデットエージェントは「ぐわっ!」っと声をあげて後ろに倒れた。
え、今斬った!?普通人質がいたら慎重にするものじゃ…?
神里様の剣術が凄すぎて思わず目を丸くする。
デットエージェントが倒されたことで支えを失い、そのまま倒れそうになる。
やばいと思ってぎゅっと目を瞑ると地面に倒れる寸前に神里様にうけとめられた。
「大丈夫ですか?遅くなってすみません」
優しく心配そうな眼差しを向けられ、前の自分の発言を思い出して気まずくなる。
神里様に口の布と手首の縄を取ってもらい、自由になってから口を開く。
「ごめんなさい…。私ったらあんなに酷い事を言ったのに助けて貰ってしまって…」
俯きながら謝るとそのまま抱き上げられる。
「良いんですよ、Aさんが無事で良かった。屋敷に医者を呼んでいるのですぐ帰りましょう」
「え!?あ、あの、おろしてください…」
抵抗する元気もなかったけれどお姫様抱っこはさすがに恥ずかしい。
「その怪我では歩いて屋敷に帰れないでしょう?大人しく甘えてください」
からかうような笑みを浮かべて歩き出す。
確かに歩いて帰るのは現実的では無い。
「…はい」
私は大人しく甘えさせてもらうことにして神里様の腕の中で目を閉じた。
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椿(プロフ) - ありがとうございます〜!更新頑張ります! (8月6日 14時) (レス) id: bc50e09104 (このIDを非表示/違反報告)
夜空ゆーたお(プロフ) - 続き楽しみです! (8月5日 1時) (レス) @page20 id: 9a1d60d013 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2023年7月16日 19時