その雪寄草に、口付けを。 / 神里綾人 (ページ22)

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其ノ弐拾ページ22

「はーい、み〜つけた！」

「うわあみつかったー！Aねえちゃん見つけるの上手ー！」

最後の一人をみつけて抱き上げる。

「これで全員ね〜！私の勝ち！」

ピースサインをして勝ち誇った笑みを浮かべているとこわばった声が聞こえてきた。

「Aねえちゃん…あれ…」

そう言って指差された方向を見ると、数人のファデュイがこちらに向かって歩いてきていた。

「ファデュイ…？なんでこんな所に…」

狙われている？子供たちを守らなくては。

「私が引きつけるからすぐに逃げて。振り向かずに走って家に帰るのよ」

子供たちにそう囁き、行ってと促す。

全員見つけた後で良かった、あとは私がどう逃げるか。

とりあえず子供たちを逃がさなくては。

刀を抜いて戦闘態勢に入る。

しかし1人のファデュイが銃口を子供たちの方へ向けた。

「っ！危ない！」

急いで走り出し、身を呈して子供たちを守る。

バンッ！

「うっ…！」

その瞬間、右肩に激痛が走る。

撃たれた…！子供に向けて躊躇なく撃つなんて…！

「Aねえちゃん！！」

恐怖に満ちたその目には涙がたまっている。

「大丈夫、大丈夫よ。心配しないで。ほらはやく逃げて」

安心させるように微笑んではやく行きなさいと背中を押す。

みんな不安そうに少し私を見て、覚悟を決めたように走り出した。

それを見た私はファデュイの方へ向き、刀を構える。

肩の傷は決して軽傷ではない。

ドクドクと血が出ているのを感じ、神の目を使って止血になればと冷やし、ファデュイに向けて話す。

「…何が目的なの？」

「目的…そうだな、お前が目的だ」

目的は私？

志倉家の長女だから狙っているのかしら。

ファデュイの意図を考えていると、交渉を持ちかけてきた。

「お前はあの子供らに危害を加えて欲しくないだろう？お前が大人しく付いてくれば危害を加えないと約束する。どうだ？」

「…抵抗したら？」

「もちろんお前も子供も殺す」

ファデュイは不敵な笑みを浮かべて自信ありげに答える。

「…分かったわ。抵抗はしない。その代わり約束は絶対に守ってちょうだいよ」

刀を地面に落として言うと手を紐で縛られる。

「ちょっと！丁寧にやってよ、あなた達のせいで怪我してるんだから」

肩が痛むので文句を言うと口を布で抑えられる。

「素直に眠ってろ」

その声を最後に私の意識は遠のいていった。