其ノ拾捌 ページ20
「ど、どうしてここに………!?」
後ずさりしながら戸惑う。
神里屋敷は城下町にはないから会わないと思ったのに…!
「貴方こそどうしてここにいるんです?子供たちの所に行っていないのに娯楽小説を買いには来れるんですね」
皮肉そうに言うその目は笑っていない。
「そ、それは…」
神里様に会うとお父様に怒られるのだからこのタイミングでもう会わないと伝えるべきか。
「…別に貴方には関係ないです」
顔を横に向けて言う。
顔を横に向けたことでまだ治りかけていなかった青あざが見えてしまい、神里様の表情が変わる。
「その痣…どうしたのですか?誰にやられ…」
頬に手が伸びてきて慌てて振り払う。
「触らないで…!」
神里様の表情をみて、やってしまったと後悔する。
「いや…その…すみません…」
「いえ、こちらこそいきなり顔を触ろうとするのはよくありませんでした。ですが私たちは友人でしょう?何か悩みがあれば聞きますよ」
神里様は優しく微笑んだ。
けれど2人で話しているところをお父様に見られてしまえば今度こそ青あざどころでは済まない。
「何も無いです。…でも、もう私には構わないで下さい。子供たちの所へ行くのを辞めたのは行くと貴方に会ってしまうからです」
冷たくそう言い放つ。
自分はなんて酷い人間なんだろうと思い、自分の表情も見られないように顔を伏せる。
神里様は黙っていて、私は神里様の表情を見ることが出来なかった。
少し時間が空いてから神里様が話し出す。
「そう、ですか。分かりました。もう行きません。なので子供たちの所へはまた行ってあげてくださいね。みんな待っていますよ」
そう言い残して立ち去る。
神里様が居なくなって息をつく。
はぁ…私ってなんて性格が悪いの…。
自己嫌悪に陥ってしまい新しいシリーズを買う気持ちにならなかった。
とりあえず今まで読んでいるシリーズの新刊だけ買って家に帰る。
立ち去った時、神里様はどんな表情をしていたんだろう。
私は自分のことしか考えられない性格の悪い人間だ。
家に帰ってもその事が頭から離れずせっかく買った娯楽小説を読む気にはなれなかった。
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またも忘れていた補足がありました。
このお話は魔人任務後のお話で、目狩り令や鎖国令は終わっています。
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椿(プロフ) - ありがとうございます〜!更新頑張ります! (8月6日 14時) (レス) id: bc50e09104 (このIDを非表示/違反報告)
夜空ゆーたお(プロフ) - 続き楽しみです! (8月5日 1時) (レス) @page20 id: 9a1d60d013 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2023年7月16日 19時