その雪寄草に、口付けを。 / 神里綾人 (ページ17)

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其ノ拾伍ページ17

八重堂では月に1回新刊が多く発売される日がある。

お母様はその日は欠かさず私を連れて八重堂に足を運んでいて、その度に熱く私に娯楽小説を語るのだ。

その影響で私も娯楽小説が好きになっていた。

今日はその日ではないけれど沢山の娯楽小説を眺めてるだけでも楽しいし、暇つぶしにはなる。

「おやAではないか。今日いるのは珍しいな」

新規開拓でもしようかしら…と表紙を眺めていると不意に声をかけられた。

「八重様！こんにちは。」

振り向くと八重宮司様がいた。

私は小さな頃から八重堂の常連なので八重宮司様にもよくお世話になっていた。

八重宮司様は私の顔をみると少し深刻そうな顔をした。

「A、泣いたのか？」

「え？あ…」

すっかり忘れてた、この顔では家に帰れないから八重堂に来たんだったわ…。

「なにか辛いことがあったのか？妾が聞くぞ」

八重宮司様には今まで沢山悩みを聞いてもらって励ましてもらっている。

お母様がいなくなった時も話を聞いてくださったいわば私の姉のような存在だ。

「大したことではないんですけど、実は…」

神里様にお母様の話をして泣いてしまったと簡単に伝える。

「A、あの若造と仲が良かったのか？」

「わ、若造？まあ最近よくお話しますよ」

八重宮司様が不機嫌そうな顔をして聞いてきたので少し疑問を持つ

「まさかあの若造と恋仲ではないじゃろうな？」

疑うような目で見られて頬が熱くなるのを感じた。

「恋仲!?ただのご友人です！何故そうなるのですか!?」

ブンブン手を振って否定する。

「あの若造は気に食わんのじゃ、何を考えているのか分からぬ。そんな若造に妾のAを取られては困る」

八重宮司様は唇を尖らせて言った。

「えぇ…。神里様は私の大切なご友人です。ですが八重宮司様も大切な人ですよ？1番信頼している人です」

あまり伝える機会がなかった気持ちを伝えると八重宮司様は機嫌を治したようでにっこり笑う。

「ふふっそうか。やはりAは可愛いな」

八重宮司様私の頭に手を置いてそう言うと鳴神大社に帰って行った。

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更新が少し遅れてしまってすみません。

夏休みが思いのほか忙しくバタバタしてしまいました。

最近はマシュマロをやりたいけれどTwitterアカウントを作るのが面倒だなと思っています。

更新頑張ります。