10話 ページ11
「おかえり」
「はい、
…って、書類、
終わってるじゃないですか」
珍しい。
「んじゃ、コーヒーでも入れますよ。」
私はそう呟いて、
部屋の隅に設置してある
インスタントコーヒーを注ぎ始めた。
「はい、ブラック派でしたよね？」
入れ終わって、
一旦確認する。
クザンさんは、
やっぱりいいなぁー
もういいってことにしてもいいかな…
なんて呟いていた。
「何いってんです？
…できましたよ」
「ありがとう」
素直にコーヒーを貰ったクザンさんを横目に、
私は出たゴミなどを片づける。
「？！」
…反応は、上々、かな。
「アキちゃん…？！」
「へへ、案外杜撰なんですねぇ
それだけ信用されてたってことかな。」
手を顔に押し付け、
隙間から睨むようにして
こっちを見ているクザンさんに、
私は笑いかけた。
「っ！」
ぴゅぴゅん！
とっさの判断なのか別人と認識したのか、
敵と思われたか冗談か、
その真意は定かではないが、
明らかに私を凍らせる気で、
クザンさんが氷の粒を放った。
「ちょっ、、」
私は慌てて火の盾を展開する。
「…こういう反応されると、
何も出来ないのは惜しいところですよねぇ…
……そろそろ限界でしょう？
楽になっちゃいましょうよ！」
……できるだけ不快にさせる言葉を。
できるだけ余裕そうな笑みを。
……こうでもなければ私は、
きっとこの人から離れることなどできない。
(ほんとにあなた、すごい人なんですか？
書類の改ざんー？！
今度は偽造？！
これ先週ですよ？！提出は！！
…ったくそれセクハラですって！
…七武海会議、です！！
センゴクさんが激怒なさってましたよ？！
なんで凍ってるんです、この書類…
海の上をわたれる能力者って、凄い…！
普段とは比べ物にならん格好良さですね！)
私の上司。
たくさんのことを一緒に見て、
たくさん教えて貰って。
たくさん面倒を見た。
……なんかそれはおかしいような気もするけれど。
ダン！と音を立てて、
机から一気に凍り始める。
「無理ですよ」
私のその言葉を皮切りに、
クザンさんは倒れ込んだ。
「……ごめんなさい。
もしかしたら、知ってるのかもですけど。
…これが私の答えなんです。
お世話に、なりました…！！」
その言葉を、青キジが聞いていたかどうかは、
私の知るところではない。
続く
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作者名：納邑 | 作成日時：2019年1月22日 23時
