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風磨「どうぞ」
風磨くんが助手席側のドアを開けてくれて、
緊張しながら座る。
何気に風磨くんの車に乗るのは初めてだ。
「どこ行くんですか?」
風磨「内緒」
どんだけ聞いても「教えなーい」って流されて、
車に乗ってどれくらいが経っただろうか。
気付けば外の景色は木や緑に囲まれていた。
風磨「着いたよ」
「えっ、ここ…」
薄着じゃまだ肌寒い3月末だというのに、
着いたところは海。
「もしかして入るんですか…?」
風磨「馬鹿なの?」
少し引き気味に聞いた言葉に真顔で聞かれたかと思えば、
風磨「ま、行ってみれば分かる」
そう言って車を出た風磨くん。
私の方に回ってくると、ドアを開けて手を差し出してくれた。
その手を握って車を出ると、
握られた手を離すことなく海の方へ向かう。
コンクリートになっている階段の1番上から
海を見下ろすと、穏やかに流れている海に
照らしている太陽の光が綺麗で。
「きれい…」
風磨「だろ?」
得意げな風磨くんは階段を1段降りて腰を下ろした。
私も同様に、隣に腰を下ろすと
少し照れ臭そうに笑った風磨くんと目が合う。
風磨「よく夏になったらここに友達や後輩連れてくるんだけどさ、行き詰まりそうになった時も1人で来るんだよ」
「……そう、なんですね……」
そんな大切な場所に、私を連れてきてくれたんだ。
嬉しい。
風磨「俺の好きな場所のひとつなんだよ」
『好き』
その言葉が少し強く耳に残った。
このまま海を眺めておくのもいいけど、
近くに水族館もあるからそこに行こうよ、と
風磨くんに手を引かれたまま歩く。
「…あの、手…大丈夫ですか?」
風磨「ん?あー、ここら辺人少ないから大丈夫」
…というより、付き合ってもないのに
どうして手を繋いでるんだろう。
私も嫌って思わないって言うか…。
大きくてゴツゴツしてるあたたかい手が心地いい。
少し歩いて着いた場所は
さっき言っていた水族館。
『ちょっと入場券買ってくる』
そう言って彼の手が離れた。
一瞬で冷めてしまった手の温もりが、妙に寂しく感じる。
『入場券ぐらい私が払います』
そう言えば、眉を下げて笑った風磨くんが
『今日は俺の前で財布出すの禁止』
そう言って無理矢理私の鞄に財布を戻した。
…カッコイイなぁ。
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梦苺(プロフ) - MAYUKOさん» こんにちは!ありがとうございます。とてもモチベーションに繋がります(^^)亀更新ではありますが、是非最後まで見てやってくださいー! (2019年4月6日 16時) (レス) id: e5f409bb48 (このIDを非表示/違反報告)
MAYUKO(プロフ) - こんにちは。とても面白いです。更新楽しみにしています! (2019年3月31日 14時) (レス) id: c9e054e139 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦苺 | 作成日時:2018年11月6日 3時