月下美人 (ページ2)

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単位を取り終わり、大学を無事に卒業できると思ったその矢先のこと。

突然、韓国にいる親友から電話がかかってきた。

「こっちに来て一緒に働かないか？
お前が決心するまでの期間限定でいいからさ」

正直、色んなことから逃げ出したかった私にとって、とても都合のいい話だった。

親友の提案を２つ返事で受けて、
一部の反対を押しのけ、
今彼の働いている会社に来ている。

入り口のスタッフさんに案内された事務室で待っていると、大荷物を抱えた、懐かしい顔が現れた。

『久しぶり』

『おー。急に悪かったな』

抱えた鞄を雑にテーブルに置くと、中から資料が何枚か飛び出してきた。

『相変わらず雑なんだけど。
そんなんでマネージャー出来てるの？』

『これでも仕事は超一流だから』

若干ドヤってくるのは腹立たしいが、
元々容量のいい仕事の出来る人だ。

そんな私より3つ上の奏は、高校生の時に違う事務所からスカウトを受けて韓国に渡った。

アイドルを目指してた訳では無かったけど、芸能界に興味が全く無いわけでもない。

そんな気持ちで渡った数ヶ月後に、

〈アイドルとは別にやりたい仕事を見つけた〉

私や周囲の人間を驚かせるメールが届いたのだった。

昔から目立つ方だったし、てっきり芸能活動を始めるのかと思ってたから、かなり意外だった。

まさか裏方に、マネージャーになるなんて。