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かつかつ...チョークで黒板に何かを書く音で目が覚めた 。
ぼやぁっとした中 、“ 誰か ”の後ろ姿が俺の目に映る 。
その後ろ姿が控えめに教室を出ていって気づく 。
｢ っ 、さっきの 、！ ｣
その“ 誰か ”があの子だということ 。
俺は急いでその子のあとを追いかけた 。
ちらっと横目に見た黒板には『 戸締りよろしくお願いします 』と書かれていた 。
・
教室を出ると階段の曲がり角をちょうど曲がった君 。
その姿を捉えると 、俺は一目散に走った 。
そして階段を降りて 、下駄箱まで来たときだった 。
｢ っあの 、！！ ｣
｢ っひゃっ 、？！ ｣
勢いで肩を触ってしまって 。びくっと震えて振り返った君 。勢いよく俺の手は払われて 。
でも君はやっぱりあの時と同じで 、耳は真っ赤 。
大きめのメガネに 、少し長い前髪が片目を隠す 。マスクで口は覆われていて 、あのぽてんとした唇は見えない 。
｢ 君 、 ｣
そう言いながら手を伸ばせば1歩後ずさる 。ふるふると震えながらスクバを握っていて 。
｢ ...俺のこと 、怖い..、？ ｣
｢ ぃやっ 、ぁの...ぅっ 、 ｣
震える手を顔の前にもってきて 、ぶんぶん振る 。
上手く話せてなくて 、さっきからもごもご 。
｢ その..ぉ 、ぉれに..な 、..なにか..、、っ？ ｣
言葉を振り絞って言ったのはそのひと言 。
｢ あっ...なにかって訳じゃないんだけど 、
俺 、君のことを知りたいなって思って 。 ｣
｢ へ..っ...？ ｣
そしてまた真っ赤に染まる君の耳 。
｢ あ 、別にヘンな意味じゃなくて 、純粋に君のことを知りたいなって ｣
｢ っど..どぅゅう 、..ぁのっ 、... ｣
するとすごく焦って 、ご 、ごめっごめんなさい！と何回も噛んで 、走って逃げてしまった 。
｢ 怖がらせちゃったかな.. ｣
なるべく優しく話しかけたつもりだった 。
だけど君はすごく焦って戸惑って 。
入れ替えられた靴を見ると 、名前が書いてあった 。
これが 、俺が君の名前を初めて知ったときのこと 。
まさか君の口から聞くんじゃなくて君の下駄箱で知るなんて思いもしなかったけどね 。
＿＿＿伊野尾 慧 。
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作者名：らて | 作成日時：2017年8月17日 18時
