●頼れる人 ページ9
．
｢大丈夫、下カーペットだから何ともないよ。倒れたのが前で良かった…｣
この高さだし、後ろだったら頭を打っていたかも…と考えるとゾッとする。
心配かけてごめんねとすぐ立ち上がると、ヘレナちゃんは少し考えたような仕草をして、数秒後、私に手を差し出した。
｢Aさん。やっぱり手を繋ぎましょう。｣
｢へ？｣
｢荘園の中なら、私の方がよく知ってます。だから私にAさんをエスコートさせてください。｣
｢いやいや…さすがにもう転ばないよ。ほら行こう！｣
｢あ、そこ段差｣
｢えっ！｣
｢…｣
言ったそばから、という視線を送ってくるヘレナちゃん。
普段はこんな風に転んだり躓いたりすること滅多にないのに、この非日常な状況で少し頭がふわふわしているのかもしれない。
ヘレナちゃんはクス、と笑うと｢お手をどうぞ｣と手のひらを上に向けて私に差し出した。
｢…じゃあ、お願いします。｣
｢任せてください！｣
ヘレナちゃんは慣れた足取りで次々と荘園を案内してくれる。
私をエスコートする手はすごく小さいのに頼もしくて、目の見えない彼女だからこそ繊細に、全てを委ねても怖くないような扱いをしてくれた。
｢最後に、ここが私の部屋です。何か困ったことがあればいつでも来てください。
…これで一通り案内し終えましたが…大丈夫そうですか？｣
｢うん。ありがとう、おかげで助かっちゃった。｣
｢もう転ばないでくださいね｣
｢善処します…｣
嘘ですよ、とイタズラな笑みを浮かべるヘレナちゃんは、大人びているけど19歳らしい子どもっぽさもあって、純粋に一緒にいて楽しい。
その事を正直に伝えると、ヘレナちゃんは照れくさそうに自身のふわふわの髪の毛を撫でた。
｢…実はね、私ここに来てからずっと心細かったの。
だからヘレナちゃんがこうして親切にしてくれて、すごく嬉しかった。｣
｢頼りにしてるね｣と伝えると、ヘレナちゃんはさっきとは打って変わって、目をぱちくりと丸くさせた。
｢ヘレナちゃん？｣
｢…あ、いや…私、誰かに頼ることはあっても頼られることってあまりなくて。だから、ちょっとびっくりしたというか…｣
ヘレナちゃんは杖をぎゅっと握ると、少し頬を赤らめて私の方を見つめる。
｢頼もしい…頼もしい、ですか？私。｣
｢うん、頼もしいよ。｣
｢…ふふ。｣
｢頼られることって、こんなに嬉しいんですね。｣と花が咲いたように顔をほころばせる彼女に、何だか私も嬉しくなって、一緒にクスクスと笑い合った。
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ななな(プロフ) - 花恋さん» ありがとうございます〜！こちらこそ読んでいただけてとっても嬉しいです！これからの展開もぜひぜひ楽しんでください(*´∀`) (2023年4月19日 3時) (
レス) id: 5843cfdf5e (このIDを非表示/違反報告)
花恋(プロフ) - 更新嬉しいです！これからどうなるのか楽しみにしてます！ (2023年4月18日 18時) (レス) @page42 id: e938aee02d (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - マシロ＿mashiroさん» コメントありがとうございます！待っててくださる方がいると思うとすごく励みになります(；；)果たしてウィリアムと仲良くなることはできるのか、これからも楽しみにしてくださると嬉しいです！ (2023年4月18日 17時) (レス) id: 5843cfdf5e (このIDを非表示/違反報告)
マシロ＿mashiro(プロフ) - ウィリアム編楽しみに待ってます！ (2023年3月6日 14時) (レス) @page41 id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - あきさん» とっても嬉しいお言葉ありがとうございます(；；)こちらこそ読んでいただけて感謝しかありません…！まだまだお話は続くので、ぜひ今後ともお付き合いください！ (2022年10月16日 19時) (レス) id: 5843cfdf5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななな | 作成日時：2021年9月12日 14時
