●カート・フランク ページ11
．
｢冒険譚、ですか？｣
｢ああ、別に冒険の話じゃなくてもいいんだ。君の国の話、民族の話、文化の話…すごく興味がある！｣
そう言って私の分もコーヒーを淹れてくれたカートさんに会釈をして、マグカップを受け取る。
…本当にただ私と話したかっただけで、悪気はなかったようだ。
一安心して辺りを見回すと、どうやらここはカートさんの部屋らしく、大きな本棚にはたくさんの本が敷き詰められていた。
｢見てくれ、この本にもジャパンが出てくるんだ｣とカートさんが目を輝かせながら私に見せているのは、おそらくガリヴァー旅行記だろう。
…第五人格は確か、19世紀か20世紀辺りの話という設定だった気がする。日本でいうと、江戸・明治・大正・昭和……
生きた年代がバラバラのはずの彼らがどういう仕組みで全員同じ空間にいるのかは分からないが、少なくともカートさんが知っているのは江戸・明治辺りの日本のはずだ。
…令和を生きる私が、それらの時代の人間を騙れる気がしない。確実に失言をして、墓穴を掘ることになる。
｢……カートさんは日本を訪れたことあるんですか？｣
｢もちろんあるさ！よし、聞かせてあげよう、あの旅路の記憶を…｣
とりあえず質問返しをして様子を見ようとすると、カートさんは私のその問に待ってましたと言わんばかりに飛びついて、意気揚々と｢あれはここへ来る少し前のこと…｣なんて語り始めた。
なんだ、自分が日本の話をしたかったのか。
これなら私が何かを話す必要もなさそうだと安堵して彼の話を聞いていると、さすが修道女に『彼の演説には人の心を動かす力がある』と言われていただけあって、どんどんと彼の物語に惹き付けられていく。
天岩戸で本物の天照大御神が現れた話、天狗の羽団扇を拾い妖魔と対峙した話、鬼の寝床から傷一つ負うことなく生還した話…
どれも聞いてるだけで鮮明に情景が浮かんできて、何が起こるのか分からないドキドキ感と予想外の展開へのハラハラ感に息を呑む。
すごい、この人の話は本当にすごい。気が付けば五感全部、他のことが一切意識に入らないくらい私は、彼の話にのめり込んでいた。
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ななな(プロフ) - 花恋さん» ありがとうございます〜！こちらこそ読んでいただけてとっても嬉しいです！これからの展開もぜひぜひ楽しんでください(*´∀`) (2023年4月19日 3時) (
レス) id: 5843cfdf5e (このIDを非表示/違反報告)
花恋(プロフ) - 更新嬉しいです！これからどうなるのか楽しみにしてます！ (2023年4月18日 18時) (レス) @page42 id: e938aee02d (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - マシロ＿mashiroさん» コメントありがとうございます！待っててくださる方がいると思うとすごく励みになります(；；)果たしてウィリアムと仲良くなることはできるのか、これからも楽しみにしてくださると嬉しいです！ (2023年4月18日 17時) (レス) id: 5843cfdf5e (このIDを非表示/違反報告)
マシロ＿mashiro(プロフ) - ウィリアム編楽しみに待ってます！ (2023年3月6日 14時) (レス) @page41 id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - あきさん» とっても嬉しいお言葉ありがとうございます(；；)こちらこそ読んでいただけて感謝しかありません…！まだまだお話は続くので、ぜひ今後ともお付き合いください！ (2022年10月16日 19時) (レス) id: 5843cfdf5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななな | 作成日時：2021年9月12日 14時
