寄り道しないの！ by緑 ２

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『だから、あんときより忙しいんだからいまはもっと無理だろ』



そう返したけどふっかはわかってねぇなとでも言いたげに首と手を振った。

一体お前は何が言いたいんだよ。

そもそも俺の恋愛事情なんてこいつになんの関係もない…こともないのか。

佐久間のことで最後に頼ったのはふっかだったもんな。

なんだかんだ以心伝心なもんだから隠すに隠せなくて、誘われるまま飲みに行って洗いざらい喋らされた。




『だぁかぁらぁ、それは言い訳だっつーの』

『言い訳じゃねぇし。それが唯一最大の理由だろ』

『うわっ、もぉぜんっぜんわかってない！』

『翔太かよ』




でもさ、だからこそいま俺もふっかが何か抱えてるなら相談くらい乗りたいなって思ってるんだけどな。

たとえ佐久間より隠すのが下手って言っても、ふっかもなかなかに悟らせない。

年長２人の演技力たるや…。

おまけに悟られることは嫌がるもんだから、相棒に対してくらい妙な遠慮なんか捨てればいいのにって常々思ってる。

少なくとも俺の前ではなんでも話してくれていいし。

けど待ってたってこいつは自分からは何も言わないんだろうな。

いつも、なんでも抱え込んじゃう。

俺も人のこと言えねぇけど、俺の場合はふっかに巧いこと誘導されて吐き出せるんだよね。

根気よく待ってくれて、なんでも聞いてくれる。

お互いいろんな話をするけど、悩みとなると普段の俺はふっかから打ち明けてくれるまで待ってるスタイル。

無理に訊き出しても、って思ってるから。

けど今日は、なんか放っておけない。

ならこっちから訊くしかない。

俺は話の流れを無視して、ふっかに問いかけた。



『ふっか、なに悩んでんの？』



遠回しに訊いても意味がない。

悩みがあることは前提なんだろと、直球で訊いてみた。

慣れない気恥ずかしさで顔は見れなかったけど、きっとふっかも見られたくないだろう。

図星だったのか饒舌だったふっかが黙りこくった。

いつでも話してくれていいように俺も口をチャック。

少しの沈黙が流れる。

そんななか、今日一日のことを思い返してふと、本当にふと、とある考えが頭を過った。

もしかして俺と佐久間のことをいろいろ言ってくる裏には、ふっかにもそういう事情があるんだろうか？、と。



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