寄り道しないの！ by緑 ２

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１３ おまけ



飲み会の翌晩、目黒のスマホが鳴った。

表示された名前を見て電話なんて珍しい、何かあったのかと急いで電話に出る目黒。



『もしもし佐久間くん？どうしたの？』

『こんばんは。いまちょっといい…？』

『うん』

『えっと、その…』



歯切れの悪い切り出しになんだろうと思っていると。



『あの、さ…ゆうべは、ごめんね…？』

『………あ。』



昨夜、と言われピンとくる。

そういえば、阿部に「佐久間に電話させる」と言われていたことを思い出し、変な緊張から若干背筋が伸びる。



『あー、いや。俺のほうこそ、なんかごめんね？』



なんかってなんだ、と自分自身にツッコミを入れ。



『ううん、めめが俺のこと送ってくれたんでしょ？ ありがとう』

『送っただけだけどね』

『覚えてないんだよねぇ…その…店出る前から記憶飛んでてさ…』

『あー、やっぱり？２人ともペース早かったもんねぇ』

『ごめん』

『ううん。まぁ先に康二帰したのは正解だったかな』

『えﾞっ？』

『はぁ？！おい聞いてねぇぞ佐久間！』



急な乱入の正体は。



『えっ？！あ、阿部ちゃんっ？！』



佐久間と目黒の会話に割って入った人物は阿部。

佐久間と同じ距離感で叫びが響いたあたり、阿部がごく近くで通話の内容を聞いていたことが伺える。



(なにこの状況？！怖いんだけど！ってか、そうか。俺、佐久間くんと帰ったことしか言ってねぇわ…やっべ…)



目黒は持ち前の生きる力でもって一瞬で事態を悟り、手で顔を覆い天を仰いだが時すでに遅し。

しばしの沈黙が流れ。



『…佐久間、約束な』

『え、わっ、あべちゃ！ちょっ！』

『頭でわからないなら体で覚える！』

『ぅおわっ！あぶなっ！』

『暴れると落とすぞ！』

『落ちるの間違いでしょ！じゃなくておろしてよ！』

『うるさい！今夜寝れると思うなよ！』

『うそでしょっ？！もうムリだよ！やだっ！おろしてよっ！やだっｔ(ﾌﾟﾂｯ…



目黒は２人の声が段々と遠ざかるスマホの画面をそっと閉じた。



『…なんか、ごめん…』



態とではないものの佐久間に対しては申し訳なく思い。



『…ってかマジでありえねぇ…』



通話状態のままお仕置きタイムに突入した阿部に狂気を覚えた。

今後、佐久間とプライベートで２人っきりには決してなるまいと思う目黒だった。



『まぁ…出来るだけ、ね』



ストレートで熱い男、目黒。

諦めは有り得ないほど悪いのかもしれない。



end

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