寄り道しないの！ by緑 ２

１　季節の境目　桃＋全 ページ1

１ ※今回はだいぶシリアスです ※メインと住居設定が一緒です



それはとある収録の当日だった。

２人ずつに分かれ個別にパーテーションで仕切られた控室。

俺と一緒だったのは佐久間。

別の仕事の関係で先に着いていた俺は控室でひとりクイズアプリに勤しんでいた。

まだ時間あるなと時計を見たとき、丁度ドアがノックされ部屋に佐久間が入ってきた。



『…はよぉー…』

『佐久間、まだ具合悪い？』

『ん…気持ち悪い…』



ちょっと早めに控室に入ってきた佐久間はどこからどう見ても体調不良だった。

このところずっと微熱続きの佐久間。

たぶんコロコロ変わる天気のせいだ。

風邪のように見えて咳も出ないし、症状としては微熱と極度の倦怠感、時々激しい頭痛といったところ。

こんなご時世だから念のため専門の検査機関で感染症の検査を受けるも無事陰性という結果だった。

それを受けて病院側からすすめられ別の検査もいくつかしてもらったけど異常なし。

要はこれといった特別な原因はなく、強いて挙げるなら佐久間のもって生まれた体質に因る症状らしい。

昔は本当に虚弱体質で、事務所に入り体を鍛えることで改善されたというのは自他ともに認めるところ。

それでも、どんなに気を付けてケアしていても、気持ちとは裏腹に身体が追い付かないときが佐久間にはある。

事実ここ一週間くらい徹底して摂生生活をしているにも拘わらず症状が快方に向かうことはなかった。

悪化もしないが善くもならないのは辛い。

本人も早く治そうと躍起で、昨夜も早々に自室に戻って就寝してたはずだ。

なのに今朝もまったく下がらない熱と、おまけに吐き気が止まらないのだという。

途中で何かあって遅れるのを避けるため家を早めに出たらしい。

控室に入るなり怠そうに近場の椅子に腰かける。

俺はパーテーションを無視して佐久間のもとに駆け寄った。



『…これホントに微熱？』



真っ青な顔。

おでこに手を当てれば昨日より少し高い体温。

入館時にチェックされたときは３６．８度だったらしい。



『薬は？』

『飲んだ…効いてると思うんだけど…』



なのにその体温。

嫌いな薬をがんばって飲んでいるにも拘らずこれではもう打つ手はない。

それよりいまは佐久間に仕事をさせるかどうかだ。

素早くラインを送ろうとすると、それに気付いた佐久間が俺の腕を掴んだ。



『ごめん、迷惑かけて…でもやるよ。寝てても動いてても一緒だから』



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