snow pink

３　桃 ページ3

桃



熱があると言い切られて、俺はびっくりした。

いやいやいや、ないからね？

佐久間は今日も絶好調でやんすよ？！



『や、ねぇから。ぜったいねぇから』

『お前の特技とやらが発動してるだけだろ』



確かに、俺には自分の体調不良に気付けない、という特技があった。

よっぽどになったらわかるんだけど、そこそこのは認知できない。

それを特技とは言わないってふっかに激怒されたことがあるけど、わからないものはわからない。

人のには気付けるんだけど、自分のというとからっきし。

特に熱は微熱程度じゃぜんぜん気付けない。

けど今日はむしろ体軽くて調子いいなって思ってるから絶対に熱なんかない。



『まったっかっ！』



うわ、ふっかに聞こえてた。

あー、ほら怒ってんじゃーん。

なんで普通の声量で言っちゃうかな照。

どうせ耳元でイケボしてくれんならささやいてよ。



『はい、どうぞ』



え？舘さま？なんで体温計を照に渡すの？

うわぁ、当たり前に脇に挟まれる…ってかなんで貴族なのにそんなもん持ち歩いてんの？



『最近佐久間が結構熱出すからさ』



エスパーかよ！そして用意周到かよ！



『佐久間くん熱っすか？』

『しんどいん？』

『岩本くん、横にならせたほうがよくない？』



年下３人に心配される。

情けな。

熱なんかないのに。

にしてもこの腕、鋼鉄製かよ。

さっきから逃げようとしてんのにぜんっぜんムリなんですけど。



『いや熱なんかねぇし。離せって照。ね、マジなんともねぇから！』



足をジタバタさせて抵抗するも上半身がびくともしない。

なにこの状況！

虚しい抵抗を続けているとピピッと音が鳴った。

わらわらと集まって口々に大丈夫かと言っていたみんながピタリと静かになる。

照が俺の脇から体温計を取って液晶を確認した。

俺も数字を見たくて一生懸命見上げるけど身長差のせいで見えない。

俺には見せない気なのか自分で確認した後は体温計をみんなのほうに向ける。

くっそ、見えねぇ！

がんばること数秒。

気が付けばみんなの冷たい視線が俺に集まっていた。

…まさか、うそ、熱、あったの？？


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