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湿る肩 ページ26

Aside

実弥さんが目を開けて立ち上がった

「……何処かで見てるんですかね?」

実弥「匡近のことだァ案外すぐ近くにいるかもしんねェなァ」

「ふふ、そうですか」

粂野さん、会ってみたかったな。一般隊士だったということは蝶屋敷に来たこともあるのだろうか

実弥さんが柱になってない時のことだから、あの頃の私と実弥さんたちが出会うことはありえないのだけど

鬼殺隊専用の墓地を出て、次は陽真のとこへ向かう

「お願いします」

初めてでは無いけれどやっぱり背中に乗るのは緊張する

実弥「おんぶなんかにそんな畏まらなくてもいいぞォ」

「だって……」

実弥「つべこべ言ってねェでさっさと乗れェ」

首に手を回して背中にゆっくり体重をかける

実弥「乗ったなァ?……よいしょっと」

グンッと一気に目線が高くなる。地面との距離がいつもと全然違う

実弥「お前ェ相変わらず軽ィな」

「えぇ…?ご飯はしっかり食べてるんですけど」

実弥「足りねェんじゃねぇのか?もっと食えェ」

そんなことを話しながらも、もう私たちは林を突っ切っている

「速っ」

実弥「まだ駆け足程度だぞォ。舌噛んじまうからあんま喋んなよォ」

これで駆け足とかやばいな。人間じゃないよ

それにこの速さと高さ、何回されてもやっぱ慣れない

すぐに街が見えて屋根に乗り移った

「ぅわあっ…」

急に飛ぶのは心臓に悪い……

実弥「大丈夫かァ?」

「あ、大丈夫です」

実弥「怖かったら言えよォ」

「はい」

山にまた入り、少しずつ景色が賑やかなところから貧しい街へ変わっていった

どんどん、崩れそうな家やボロボロな人が目立ってくる。私の生まれた街が近づいてくる

「……何も、変わってませんね」

実弥「そうだなァ」

陽真のお墓は私の家の近くにあるから生まれ育った町を通ることは避けられないけれど、やっぱり目を瞑りたくなる

「あ……」

見つけてしまった。私の生家。

たくさんの記憶が脳裏に蘇ってくる。暴力の日々、兄弟が死ぬ朝、寒くて寂しい冬の夜。私たちは抵抗も何も出来なかった。

涙で視界が霞む。言い表せない恐怖から悪寒と吐き気がする。弱い自分に、嫌気がさす。

ぐちゃぐちゃな心の中、優しい声が耳に届いた

実弥「A、見たくねェなら見なくていい。俺の肩にでも顔伏せとけェ」

言われた通りに硬い肩に顔を埋める。

「実弥さん…」

実弥「なんだァ?」

「ありがとう……」

実弥「……肩ならいつでも貸してやらァ」

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鈴音月 - ゼリーさん» やさしい゛゛゛!! (2021年6月14日 20時) (レス) id: 7ac441a921 (このIDを非表示/違反報告)
ゼリー - こちらこそお忙しい中更新してくださってありがとうございます! (2021年5月31日 17時) (レス) id: 4ef789830e (このIDを非表示/違反報告)
鈴音月 - ゼリーさん» ありがとうございます(泣) (2021年5月29日 13時) (レス) id: 665296cf15 (このIDを非表示/違反報告)
ゼリー - 受験生なんですね!受験勉強頑張ってください! (2021年5月25日 21時) (レス) id: 4ef789830e (このIDを非表示/違反報告)
鈴音月 - ゼリーさん» まじですか!?!?おめでとうございます!!(気が早い)応援のお言葉もとても嬉しいです…。更新遅くてすいません。受験生なもので、ね、うん、言い訳は良くないですね。頑張ります!!! (2021年5月23日 11時) (レス) id: 665296cf15 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴音月 | 作成日時:2020年12月21日 22時

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