とてもじゃないけど、 (ページ14)

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ep.11.5 / 過去ページ14

ここが鳳仙か。
グレーの学ランに腕を通して見上げた校門には、鳳の字が大きく掲げられていた。

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『ごめん。もしかして上田佐智雄くん？そこ、多分俺の席かも』

周りがスキンヘッドでゴリゴリだらけの中、一際目立つ…というか髪が生えてる細身の子を見つけた。上田佐智雄くん。多分、それが彼の名前。一つ隣の席が本来の彼の席で、間違えて俺の席に座ってるみたいだ。

「ああ。間違えてた。すまない」

『全然いいよ。あ、俺は矢田A。一応三中出身ね』

「三中？三中の矢田って、まさか…」

『あはは、やっぱわかる？』

「話は聞いたことある。うちの周りの学校で仕掛けに行った奴がいたが、やられて帰ってきたしな」

戸亜留市より少し離れた中学だけど、知られてるもんなんだな。三中は初め、派閥が多くて校内乱闘が後を絶えなかった。それは他校に絡まれた時もそうで、同校でも派閥が違うからと助けることすらしない奴が多かった。乗り込まれても無視、絡まれても無視、やられても派閥が違えばそれで終わり。…そんな馬鹿なことしてると学校ごと潰れると思って、俺が上に立った。それだけ。

「にしても、ボロボロだな」

『笑うなよ。この学ラン着てるだけで絡まれて、朝から大変だったんだからな』

「わるい。別に悪気はなかった」

『そんな笑いながら言っても意味ないからね』

こんな顔、するんだ。凄いクールな人だと思ったけど、笑った顔が可愛いとかずるい。それが、佐智雄との出会いだった。