【wrwrd!】潮風が吹いたなら【sha】 (ページ14)

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彼女には、今の俺と同じ年の兄がいるらしい。
その兄は世間一般で言う引き篭もりで、高校もまともに行かず中退。
就職活動もしないままだったらしい。
なぜ彼女がそんな兄を慕っていたのか、俺にはわからない。
ただ苦しそうなAを見ていると、いい兄だったのかとも思うのだ。

ありがちな話ではあった。
兄の代わりにと努力した健気な妹が、嫉妬と僻みの感情に殺される。
その時彼女の兄がどんな顔をしていたのかはわからない。
どんな性格で、どんな事情があったのかは知らないが、俺はそいつを酷く憎んだ。
ありがちな話が、どうして彼女に回ってしまったのか。

「お兄ちゃんが進学祝いで買ってくれたの」
「髪飾り？」
「うん。すごく、すごく嬉しかった」
「そうか」
「うん。すごく、すごく」

風に晒され続け、人との関わりを絶たれ、命を奪われ。
彼女は呪ってもいいはずの兄を、まだ慕っているようだった。
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」
そう、優しく笑って言った。

「なぁA、俺の名前、教えてもええ？」
ふと俺の口をついて出た言葉に、Aは目を見はった。

更新のろのろで申し訳ないです〜！