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「あ!シャオロンくん!」
パッと顔を輝かせるA。
見た目は俺より少し下位に見えるが、中身はまだ無邪気な様子が窺える。
「昨日のトントンさんはいないんだね?」
「せやで。どうやった?トントン」
「初めは大きくてちょっと怖かったけど、今は優しい人だって思ってるな」
「そうかそうか、トントン直接聞いたら失神すんで」
「え?な、なんで?」
「あいつ女の子と接点ほんま無いから」
失神はちょっと盛り過ぎたか。
グループ内での癖がつい出てしまった。
「えぇー、そうなんだ…。でも私、幽霊だよ?」
「あいつは幽霊より女が怖いねん」
すまんなトントン。
本人の知らないところで株が下がっている。
まぁ俺が下げているのだが。
「じゃあ私ともっと仲良くなれたら治るかな?」
「あいつは治らんな絶対」
「そ、それはトントンさんが可哀想…」
「なんやAは俺の味方してくれへんのん…」
少ししょげた口調で言えば、
「違う違う!全くそんなつもりは…!」
「悲しいなぁ」
「私はずっとシャオロンくんの味方だから!」
「あ、ありがとう…」
「どう、いたしまして…?」
な ん だ こ れ は 。
死ぬほど青春じゃないか自分よ。
こんな歳になってまで甘酸っぱさに顔を引きつらせるとは思っていなかった。
トントンになんやかんや言えないほどではないのか。
自分自身、恋愛にあまり固着がないこともあって、特に女関係には困っていないと思っていた。
実際不満も特になかったし、メンバーからも飽き性だと言われる程度には遊んでいたつもりだった。
それがどうだろう、この有り様だ。
俺は早るような焦るような気持ちを封するように、本題を打ち明けた。
「そ、そりゃそうと、Aはなんで死んでもうたん?」
瞬間Aの顔が黒く曇ったことを、俺は見逃さなかった。
「な、なんでだったかなぁ…?」
そんな嘘を聞きたかった訳じゃない。
「それは、言いたくないってことなん?」
ひとつまみの裏切られた感情が、先走って口に出る。
「あ、えっと、そういうつもりじゃ」
「嘘はつくのに、なんで焦ってんの」
違う、傷つけたくないのに。
酷く血の気の引いたような顔をしたAは、その場に縛られたのように、固まって動かなくなった。
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作者名:ツナマヨ | 作成日時:2019年1月17日 23時