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「え、ほんまのほんまにそういうやつなん？」
「えっ、あの、すみません…！私を見ても逃げずに話しかけてくれたのは、あなたくらいで…」
本当によかったらでいいんですよ！？
ふためくようにそう繰り返す彼女は、普通の人間のようだった。
逃げずに話しかけてくれたもなにも、俺はただ勘違いをしていただけだ。
なんなら今すぐ逃げ出したい気もする。
だが一周回って、恐怖よりも厄介事に巻き込まれる予感がそうさせているようだった。
「その髪飾り？がないから成仏出来ないって言うの？」
「そうなんです…！あれ、大事なもので…」
「ふーん、どんなの？」
「さ、探してくれるんですか！？」
「そんな時間は割けへんけどな」
なんて言いつつ心積もりは、似たような髪飾りを買って返せば安らかに召されるだろう。
そんな具合だった。
「それでも嬉しいです！私、他の人みたいに脅したり怖がらせたりして頼むのが苦手で…」
「あーぽいわ」
「うっ、ス、ストレートですね」
「いつの間にかこの尖りが定着してん」
「と、とがり？」
「あーなんでもないなんでもない。そんで髪飾りの特徴教えてえや」
「あ、そうでしたね。えーっと…」
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「ふーーん！楽勝ですわ」
俺は臙脂色の花がついた髪飾りを片手にあの岬へ向かう。
あの夜の事は、シッマ達には言わなかった。
特に深い意味はないが、なんとなく彼女に会わせたくなかったのだ。
この不思議な出来事を、俺だけが体験したかった。
事後となれば冗談交じりに話そうとも思うが、きっと信じてもらえないだろう。
それでも別にいいと思えた。
「おーい！Aさん！」
「わぁ！もう見つかったんですか？」
「まぁな！」
そう言って俺は小袋の中から、一つの髪飾りを取り出した。
「なんか野っぱらに落ちとんのみつけてな？」
これできっと成仏…
「違います…！この髪飾りじゃないです…！」
駄目か…。
「でもほら、君が言ってたんとそっくりやろ？」
「似てるけど、全然違います」
なんだ、いやにはっきり否定して。
「ちゃうんか、そっか残念だなぁ。探してみたんだけどなぁ」
彼女は自分のことを地縛霊だと言っていた。
一般に地縛霊はその土地から動けないらしいから、俺が適当に買ってきたことは知らないはずだ。
「いやでも、よー見てん。ほら、同じやない？」
「絶対に違います」
…いいじゃないかこれで。
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作者名：ツナマヨ | 作成日時：2019年1月17日 23時
