”愛して欲しい”は嘘じゃない。 (ページ21)

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「行ってきます」

返事のない扉の奥に声をかけて学校へ向かう。

ギュッと締めた靴紐がどうにもきつくて落ち着かない。

いつも通りの電車。変化のない外の景色。

そして内通者となった私。

「あ、おはよう如月さん」

「おはよう」

緑色の髪が特徴の男の子。

名前はいまだに覚えてないけど個性を使うだけでバッキバキになってるのが印象的で覚えてる。

個性自体は強いのに使い方が下手故に弱い。

「おはよ結子ちゃん！今日も早いんやね！」

「おはよう」

名前、なんだっけ。

優しくてほんわかした女の子。確か個性は無重力だったはず。

離れなきゃ。

「どこ見てんだテメェ」

「ごめんなさい」

「お前舐めてんじゃねえよ」

「・・・」

「おい！無視すんじゃねえ！！」

＿＿＿うるさい

関わりたくない。関わってほしくない。

近くに人がいてほしくない。

カバンから教科書を出してスマホを眺める。

何度も繰り返し読んだメッセージを読み直す。

”林間合宿にて襲撃

できる限りクラスメイトの個性と性格、弱点調べてこい”

嬉しかった。
こんな私が、役割をもらえたことが何よりも嬉しかった。

私だけだと思っていた。

「あいつ、信用ならねぇからな。先生、いい加減あいつ解放して別のやつにしろよ」

「ダメだよ弔。スペアがいて悪いことはないからね」

私以外に内通者がいるだなんて、私はまだ、知らなかった。