”愛して欲しい”は嘘じゃない。 (ページ15)

今日:14 hit、昨日:8 hit、合計:5,977 hit

. ページ15

「いいから帰るぞ」

「なんで」

ぐいぐいと手を引っ張られる。

成人男性に力で勝てるわけもなくてずるずると体が連れて行かれていく。

「なんでって・・・なんの理由だよ」

「逃げていいって言ったじゃない！私は貴方に、あなた達に不幸しか運ばないの！

引き止めないでよっ！！」

溢れ出したら止まらない。

「俺はリーダーだ。泣いてるやつをほっとく訳にはいかないだろ」

そんな困った顔して言わないでよ。

そんな哀しそうな顔しないでよ。

「それに」

そんな、優しくしないでよ。

「お前が不幸を運ぶかなんてわかんないだろ」

「分かってる！私は今までずっとそうだったの！

皆皆不幸になった！皆私のことを嫌いになった！！

なのに私は」

言っちゃダメだ。

これ以上言ったらダメだ。

こんな事言ったらダメだもん。

なのに、そんな瞳で見られたら溢れて止まらないの。

「私のことが嫌いな人を嫌うことすら許されない！！」

「・・・そう」

「好きになることも嫌いになることも私にはできない！

何をされても我慢することしかできない！！」

好きって思う人がいるっていうことは嫌いな人が出来るということ。

ひとつひとつの意志に私は大きな責任を抱え続けなきゃいけないの。

人との関わりも何もかも、全部全部怖くて怖くて堪らないの。

「なら、お前は俺らの仲間になれ」

「だからっ・・・」

「お前が不幸を運んだとしても別の誰かが幸せを運んできたらいいんじゃねえの、知らないけど」

「え？」

言葉を選ぶように悩みながら言葉を選ぶ死柄木さん。

「お前が何を抱えてんのかは知らねえけど、俺等は縛られないために今の社会を問いただそうとしてる」

こくりと頷くと、眉を潜めながら考えているようだった。

「だから＿知らねえけど、お前も自由に生きれる世界をお前が作れば良いんじゃねえの」

「できるの？」

「俺らはやる」

迷いのない言葉に思わず頷く。

「じゃあ」

震えた声じゃなくちゃんと伝わるように、精一杯強がりな声を出した。

「仲間に、入れてください・・・っ！」

「ああ。

ヴィラン連合にようこそ」

差し出された手をしっかりと掴んだ。

少しだけ笑った死柄木さんにつられて、私も少しだけ笑ってみせた。