ハロー、マイヒーロー 2 (ページ10)

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「...私さ、ジャニーズに入るって決まった時、初めて家族と大喧嘩したんだ」

「...」

「当たり前だけど、男集団に女1人だよ？当然、良い事だけじゃ無いじゃん？」

「うん、」

「言われたんだよね。"殺されるかもしれない"って」

大袈裟、なんかじゃ無いんだよね。

そう言って笑ったAちゃんは、なんというか、すごく疲れた顔をしていた。
可愛いワンピースに、お気に入りのパンプスを履いて、俺たちの前でひらりと回って見せたさっきのAちゃんは、どこに行ったんだろう。

「岩本くん、ちょっといいすか」

「うん？良いけど」

「話、あるんですけど」

なんかほっといちゃいけない気がして、とりあえず誰かに相談しなきゃいけないと思った。

あれから撮影が再開すればいつものように笑っているし、俺が貼った絆創膏をいじられて「佐久間に噛まれた！」なんて大嘘を言って笑わせるくらいに通常運転だった。

でも、念には念を。

とにかくAちゃんが元気がないことを伝えたら、照くんもなんとなく気付いていたらしい。

「ふうん、分かった。目黒、ありがとな」

「上手く言えないけど、悩んでるのかな...」

「...大丈夫。A、強いから」

色々探って見るわ～、って帰って行った照くんを見送って、俺は駅へ向かう。

"殺されるかもしれない"

命をかけて、なんて言葉があるけれど、Aちゃんの話はそんなのよりもずっと重い気がした。