伊吹の誓い (ページ3)

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「返して欲しいわけじゃない」

「 ···考えておく。」

「断らないんだ？」

私の唇を愛おしそうに触れてじっと見つめる。ふと、吉田の瞳に私が写った。吉田の手が私の唇から離れる。

「吉田みたいな人は諦めが悪い。何より、デビルハンターはいつ死ぬか分からない。まあ、私は死ぬつもりなんてないけど。」

「 ···そう。」

日誌を閉じる。その行動に少し苛立ちを覚えた。人を待たせているのになんなんだこの男は。

「終わらせないと」

「もう終わってるよ。君と話したかっただけだよ。じゃあ、行こうか」

本当に食えない男だ。吉田が立ち上がり、鞄を手にしたので私も後を追う。

「そうだ。メール交換しようよ」

ドタを開けた吉田が直ぐに振り返り、そう言った。ズボンのポケットからスマホを取り出し私の前でヒラヒラ動かして見せる。

「いいけど。重要な連絡以外基本無視する」

「酷いなー。俺の彼女になったのに」

「考えておくって言ったはずだけれど？？」

引き下がる様子もないので、文句を言いながら渋々メールを交換する。わたしは案外この男に甘いのかもしれない。悔しいけれど、顔だけはとてつもなくいいと思う。

「着いてきてくれる？職員室」

「残念だけど、これから本部に行かないと行けないの。貴方のせいで時間を潰されてしまったし、」

「それは残念。送るって言いたいところだけど··· 」

吉田が鞄を右肩にかける。淡々と話す彼から笑みは消えていた。

「迷惑だよね」

「迷惑」

「 ··· 」

即座に答えると黙り込んでしまった。だが、迷惑なのは事実だし仕方がないので私は玄関に向かう。

「じゃあ、ここで。また明日ね」

「 ··· 」

「俺、Aさんが思ってる以上に本気で好きだよ」

振り返ると吉田は壁に寄りかかって余裕そうな笑みを浮かべていた。あまり学校に来ない、こんなにも冷たい女のことをなんで好きになっているのか、それは今度聞かせて貰うことにした。私は吉田の告白を無視して帰路についた。