女神が鉄仮面を外さない

#25 ページ49

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Side Ishikawa.


場所を変えて、東京ラウンド。


高「あ、A」


早朝見かけたAちゃんは、すでに荷物を持って出る格好をしていた。

俺達に気付くと、手を振ってホテルを出て行った。

凄く眠たそうな、酷い顔をしている。


高「イラン対ブラジル観に行くんだと」

石「こんな早く？開場まだでしょ」

高「練習も見るとか」


ここ最近はアナリスト達が徹夜で分析をしてくれていて、彼女も加担してるのだとか。

それに情報収集を任されているから、外回りも多い。

また具合悪くなったりしなきゃいいけど。




関「あ、Aいないの！？」


練習が始まり、関田さんが気づいた。


関「どーりで今日はなんか楽だと思った」

柳「楽とは？」

関「いやさぁ」


例えばプレー中。

レシーブの乱れ、相手のブロックのマーク具合、点数差、チームの雰囲気...

その中で、トスワークに迷いが生じてしまうと、

【逃げんなや】と


関「目で！目力で迫ってくる！！なんか刺さんの！」

深「分かるわー笑」

柳「セッターだけが感じ取るやつ？笑」


なんとなく俺も分かる。

VNL始まる前にやったミニゲーム。

目が合って、ツーで打たされた。


【分かるよね？打つよね？】


魔物は、敵にも味方にも容赦がない。




会場に着いて、その後ろ姿を見つけた。

朝も思ったけど、髪を結んでいると

横顔が、なんとなくあの人に雰囲気が似ている。


石「アキさん、Aちゃんってずっとショートカットすか？パンサーズ入ってからも」

山「そうだけど、何で？」

石「や、別に」


合流した時は、多少マシな表情に戻っていたけどやはり眠そう。

アップ中にドリンクやタオルを用意したり、ボール拾いをしながら欠伸を噛み殺す顔が、なんだか面白かった。


柳「何笑ってんの」

石「俺笑ってた？」



青「ちょっとトイレ行ってきまーす」


そう言って離れた理由は、大方予想がつく。


石「ほら」

青「え」


トイレから出てきたと思えば顔がびしょびしょ。

眠気覚ましで顔を洗った、予想は正解だ。

タオルを渡す。


青「試合で使うやつじゃん」

石「誰かさんがタオル無しで顔洗いに行くからでしょ」

青「いやでも」

石「いいから」


顔にタオルを押し付けると、観念したように拭いていた。

そしてジッとタオルを見つめる。


青「...私、殺される」

石「は？」

青「石川祐希の汗つきタオルで顔拭いたってバレたらファンに殺される」

石「こんな理由で死ぬな。戻るよ」


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