女神が鉄仮面を外さない

#21 ページ41

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Side Yanagida.


多分、もうすぐ。

時計を見てそう思った。

バレーシューズがフロアを蹴るスキール音。
颯爽とした足音が近づいてくる。


あー、来た。


勢いよくトレーニング室のドアが開いた。


青「マサさん終わりです！」

西「マサさん！今日は最後に健太郎さんがミスって怒らせちゃったから早く片付けた方がええよ！」


今日は有志付きか。


青「怒らせた言うな」

西「ほんまやん。機嫌悪いし」

青「何なん？怒られたいの？」

西「怒られたいというか、かまってほしい？」
柳「よーし帰るぞー」


全日本が再集結して、Aがいる。

去年と違うのは、自分が負傷してる事。


青「たまには私が呼びにくる前に終わらせてほしいものですね」

柳「ごめんな、つい甘えちゃって」

青「これくらいの甘えなら全然いいんですけど」

西「Aさんはマサさんには優しい」

柳「そんな事ねーよ」


代表合宿の初日、久しぶりで名前が急に出てこなかったのか...

「えーと...ポーランドの人」

って真顔で呼ばれたからな。

せめてキャプテンと呼べよ。悲しいよ。


青「じゃあ30分後にバスで。
有志、最後ロッカーチェック」

西「おっす！」


最早、俺が言わなくてもすでに若手にAから指示が出てる事が多い。

彼女も変わった。
去年は見てるだけな事も多かったけど、自分を出すようになってきた。

波乱のキャプテン1年目から、だいぶ変わった。







「あれ...」


雑誌の取材後、ライターの目がAに向いた。

彼女は球拾いをしている。


「もしかして、宮乃(みやの)A？」


久しぶりに聞いたその名前に、一瞬誰だとなるところだった。

そうだ、彼女はその名前で有名だった。


柳「そう、ですね。
今はアナリストのアシスタントとしてチームに入ってもらってます」

「確か去年も帯同してましたよね...」

「え、青柳では？」


カメラマンまで話に入ってくる。

一緒に取材を受けた祐希の顔を見て、しまったと思った。


「宮乃は父方の姓で、学生時代に両親は離婚してる」

「なるほど」

柳「もういいですか？」

「あ、すみません！
ありがとうございました！」


この手の話は他人がすべきじゃない。


石「Aちゃんの事、知らなかった」

柳「わざわざする話でもないからな」


祐希はそれ以上何も言わなかった。

心のどこかにモヤモヤしたものが残ったままその日の練習を終えた。

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