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Side Haruka.
この人とコートに立つようになって五年目。
歴代の選手達を超えるセンスと技術、しなやかで力強いプレー、いつも楽しむ心を忘れない姿。
コートの外では謙虚で、優しい。
そんな彼女がここまで怒りを表す姿は、初めて見た。
きっかけはコンビ練習。
セッターの立場から、漂う不協和音を感じ取っていた。
スパイカーと合わない。
ベテラン、経験のある中堅と若手、そして今回初めて選出された新メンバー。
多種多様なスパイカーとすぐに合うとは思っていなかったけど、さすがにやりづらさは否めなかった。
速攻が微妙に合わず、ミドルの選手が打てずにボールをキャッチする。
宮「...すみません」
異なるチームの選手と合わせるのは容易ではない。でも今のは頑張って打てたんじゃ...？いや合わなかったのが結果だ。
もう一本と声を掛けた瞬間。
ボールが打ち付けられた音が響き、チームの動きが止まる。
花「何回やっても同じだよ」
見た事のない、Aの表情だった。
花「今の、ちゃんと全力で飛んでたら打てましたよね？」
あんたも、あんたも！と声を荒げて他の選手を指差す。それは先輩、後輩関係なく。
花「何なのその助走。何なのそのバックスイング。舐めとると？そんなクソみたいなスパイクなら打つな！」
私達でさえこんな姿を初めて見たのだから、新入り達はもっと呆気にとられて固まっている。監督でさえも。
花「セッターが自分の思い通りに上げてくれんと打たんわけ？何様だよ。何を当たり前に思っとるん」
セッターも！と今度は私の方を向く。
花「いつまで黙ってんの。あんたが上げないとスパイカーは活躍させてもらえんとよ。主導権握ってるんだから堂々と言いなさいよ！」
一通り言って、Aは長く息を吐いた。
花「...頭冷やしてきます」
方向転換する彼女は、怒りというより恥ずかしそうな表情をしていた。
出て行く彼女を思わず追いかけていた。
宮「A！」
花「...今顔見らんとって」
宮「...ありがとう。嫌な役、やってくれて」
きっと、怒るのが本当は苦手なんだと思う。
クソは言いすぎたなー、とAは座り込む。
宮「...でも、皆んなの顔、傑作だった」
花「...ふっ」
二人で顔を見合わせて、笑いがこみ上げてきた。
その後、Aが戻りにくいねと呟いた。
しばらく戻りたがらないAを宥めていると、優希さんや愛が様子を見に来ては、もうちょっと待って！と駄々をこねる。
最終的に中田監督まで来た時には、「戻ります！」と変わり身が早くて笑ってしまった。
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作者名：松野 | 作成日時：2019年11月16日 21時
