#84 ページ35
▽
A渡欧前に会えますか?
グラチャンバレーが閉幕し、国内ではVリーグが開幕。
柳「イタリアは中旬？」
花「はい。ドイツもでしたよね確か」
来月からドイツでプレーするマサさん。
保証はサントリーに捨ててきたと言う。
彼の言う通り、プロになるという事に安定はない。
今のところスタメンを維持できている私でさえも、わずかなミスは命取りだ。
柳「実際さ、大学卒業してプロになるって不安じゃなかった？」
花「不安に感じてる暇がなかったですね。私はずっと飛び込んでばかりだったんで挑戦し続けるのが当たり前というか」
柳「度胸通り越して麻痺してんな」
花「マサさんの真似してたらこうなりましたよ」
この人に憧れて、そうなりたいと練習して、そして多くの出会いがあってここまで来た。
そう、この人は憧れの人だ。バレーボーラーとして。
今も、きっとこの先も。
花「...ごめんなさい。マサさんとは付き合えません」
目をそらすことはなかった。
彼の瞳も揺らぐ事なく、私を見る。
柳「...まぁ、分かってた、って言ったらカッコ悪いよな」
花「そんな事はないです」
柳「フォローすんな」
額を叩かれる。
柳「俺に憧れてるって言ってる割には、どんどん先に行くよなお前らは」
花「...ら？」
柳「逸材の二人だよ」
そのまま髪を掻き乱される。
柳「だいたい、女子で俺に憧れるってどんな経緯があってそうなるの」
花「マサさんが春高で優勝した時、私鎮西に決まってたから応援に行ったんです。あと兄もいたので...
その時の会場を独り占めするプレーが、本当に衝撃的で、心奪われて...自分とこの応援も忘れてました」
孤高のエース、そう呼ばれながら、コートで躍動するその姿に突き動かされた。
彼のような選手になりたい、それが私のすべての始まりだ。
花「...私が男で、チームメイトとして一緒にコートに立てたらって、いつも思ってました」
柳「お前が男だったらポジション争いしなきゃだし、ビックサーバー被るし、面倒」
花「面倒て」
柳「俺は、花井Aでいて欲しいの」
だからそういう考えはもう捨てろ、と再び額を叩かれた。
柳「あっちでもっと憧れてもらえるようにやってくるわ！」
花「ブンデスリーガ見れるように契約します」
研究用にと付け加えた。
マサさんは笑う。
柳「いいね、そのブレなさ。
...てか、春高の時、お前の兄貴も試合出てた？」
花「はい。ミドルで。
あ、今はもうやってないんですけど...」
柳「...え、あれ兄貴だったの！？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 738人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：松野 | 作成日時：2019年11月16日 21時
