#78 ページ29
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Side You.
ラティーナご一行との別れ際、祐希にはそれぞれの部屋で寝るように言われる。どの口が言ってんだか。
ホテルに着くなり、また明日と、すぐに互いの部屋に入った。
お風呂を済ませ、次回の対戦相手の動画を見ていると、部屋がノックされた。
花「...どうしたんですか？部屋に不備でも」
柳「いや...もう少し話したくて。迷惑だった？」
花「いえ...私の部屋でいいですか？もう遅いんでどこにも行けないですし」
マサさんは少し躊躇うものの、お邪魔しますと部屋に入った。私のタブレットを拾って椅子に腰掛けた。私も向き合うようにベッドに座る。
花「今度の対戦相手です」
柳「強い？」
花「はい」
いまだイタリアの各チームの情報を把握できていない私にとっては、全てがチャレンジ、傲りが出ればそれはプレーの精度にも出てくる。
柳「抜かりないな」
花「少しでも緩んだら降ろされちゃうんで」
マサさんが笑う。
柳「相変わらずバレーのことしか考えてない」
花「ここまで来たからにはそうでないと」
柳「苦しくない？」
そう言われると、少し躊躇った。
花「苦しいです...周りの事が気になったり、結果もついてこなかったり。
でもやっぱりバレーは楽しいって思います。マサさんや祐希や、皆んながいるし」
そう言いながら、恥ずかしくなってくる。
柳「俺も...結果出せてないのに、世間では取り上げられて。周りと自分のギャップが嫌になったよ」
人気絶頂の中心として扱われる姿を見てきた。
分かる。この人は本当に魅力的で、人を惹きつけるプレーをする。
でも、心底その環境を快く思っていないことも知っていた。
マサさんは続ける。
柳「でも、Aのプレー見てると忘れるし、背中を押される」
憧れの人からの、その言葉に動揺する。
花「...そんな、私の方がマサさんみたいになろうって...私はそんな人間じゃないです」
視線を合わせれなくて、声も小さくなる。
何だろう、すごく見られてる。
柳「...A、あのさ」
マサさんの影が落ちる。
柳「好きだ」
落ちていた視線は思わず上がり、マサさんを見上げる。
花「...今、え？」
柳「Aが今、そういう気持ちじゃないのは分かってる。考えてくれるのも返事もAのタイミングでいい。ただ、今伝えておきたかった」
頭に手を置く。
柳「もう、ただの後輩とは思ってないから」
おやすみ、とマサさんは部屋を出て行った。
...言い逃げだ。
私の呟きは届かなかった。
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作者名：松野 | 作成日時：2019年11月16日 21時
