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▽
Side Yuki.
「石川選手!写真撮ってください!」
イタリアで中々聞かない日本語。
しかも低い男性の声。
不思議に思って振り向くと、してやったりと笑う二人。
石「え、はぁ!?マサさん!?Aさんも!?」
花「いいリアクション!」
柳「大成功〜」
イェーイとハイタッチをする二人。
柳「ドイツついでに寄った」
花「私もサプライズだったけどね」
マサさんがドイツに行く事は事前に聞いていた。
まさかイタリアまで、そしてAさんまで連れてくるなんて。
『ユーキ!知り合いかい?...ってハナイ!?会えて嬉しいよ!君の噂はラティーナでも聞いてるよ!』
花「何の噂?変な噂じゃないよね?」
ラティーナのチームメイトはAさんに両手を広げて歓迎する。あっという間にイタリア語を習得していた彼女はそのまま話に参加していく。
柳「恐ろしいな、あいつのコミュ力」
石「...見習わないとね」
『せっかくだ!このまま一緒に飲みに行こう!』
花「マサさーん!なんかこのまま一緒に打ち上げしようって言ってますー!」
チームは今日、このままミラノ滞在の予定。
聞けばマサさんも明日ミラノ空港から日本に帰るらしい。
『なんだ、ハナイはユーキの彼女じゃないのかー』
『フリーなら俺がアプローチしてもいいな』
石「それはダメ」
声高々に笑うチームメイト達。
向こうではマサさんとAさんがラティーナメンバーと話している。凄い光景だ。
俺の元に、影が落ちた。
柳「イタリア人のテンションについていけない」
マサさんが疲れた様子で隣に来る。Aさんはチームメイト達に囲まれていた。
石「今夜はどうすんの」
柳「ホテルとった」
石「...Aさんは?」
柳「同じとこ...大丈夫だって。部屋は別だから」
察したのか、マサさんは笑う。
柳「お前みたいな図々しさはない」
石「うわ、嫌味だ」
向こうで、何か盛り上がったのかAさんが笑っていた。
柳「あいつ、痩せたな」
石「...こっち来る前に結構嫌な目にあったらしい。もしかしたらそれも関係あって...今は無理してるのかも」
柳「...で、無理してるかもって見てるだけなの?」
石「え...?」
柳「見てるだけなら、その他大勢と変わんねぇよ。
そうやって見てるだけで、すれ違うくらいなら...俺はぶつかった方がマシだと思う」
...あ。
なんとなく思った。
マサさんが、何か決心したんだって。
でも、それが何なのか聞く事も、口を出す事も、
俺には資格がない。
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作者名:松野 | 作成日時:2019年11月16日 21時