Flowerwall-2- (ページ21)

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Side You.

イタリアで新たに自分を磨いてきたつもりだった。

それでも、
人生で最高で最大の、そう思っていた舞台はあっけなく幕を閉じた。

"日本、アメリカに敗れる！メダルへの挑戦は断たれました...！リオオリンピック、日本は五位！"

目の前で歓喜するアメリカの選手達。
コートに立ち尽くした私の背中に触れたのは遥だ。
負けたんだ、私達は。

ぐらりと、視界が揺れた。
地面が揺れた。いや、揺れたのは自分だ。

花「...っ！」

体が震え、崩れ落ちた。幾重にも巻かれた左膝のテーピングに、涙の跡ができる。
胃に冷たい水でも入り込んだような感覚が、怖くて堪らなかった。

"本日はリオオリンピックで活躍されました、花井A選手に来ていただきました！"

負けたというのに、何故呼ばれるのだろう。
毎日そう思っていた。

"リオでは、ベストサーバーランキング2位という結果を残されたわけですがご自身振り返ってみていかがでしょうか"

花「...はい。個人としては、ですけどチームの目標だったメダルには届かなかったので──」

用意した答えを話すだけのインタビュー。
オリンピック後、テレビや雑誌の取材が増えた。

そして今日も。
珍しい相方だった。

柳「疲れたな」
花「やっと、開放されましたね...」

バレー雑誌でのマサさんとの対談。
リオの出場権を逃した男子。
私達を応援してくれたけど、きっとその苦しい経験は計り知れない。

柳「膝、大丈夫なの」

花「今はもう大丈夫です」

柳「...最悪なタイミングだったな」

オリンピック真っ只中、大一番のアメリカ戦を控えた中で左膝の炎症を起こし、万全なコンディションを維持できなかった。

花「この一年...何だったんだろう」

無意識に漏れた言葉。
マサさんの視線に気づき、ハッとする。

柳「無駄とか、思うなよ」

優しい声に、鼻の奥がツンとする。

花「負けたのに、何で評価されてるんだろう」

柳「結果は負けたけど、Aは期待以上にチームを引っ張ったし、評価されて当然」

花「違うんです」

再びあの冷たい感覚が走る。

花「負けるのがこんなに怖いなんて思わなかった」

私は、勝てない事が多かったのに。

マサさんが私の肩を掴む。

柳「俺もお前も、二度とそんな思いはしない」

俺も、とマサさんは続ける。

柳「俺も、海外リーグに行くんだ。
だからAも、立ち止まらないでほしい。
東京で一緒に勝とう」

それぞれが歩き始める。
大学四年、選択の時は迫っていた。

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