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そして試合はフルセットに。
一進一退の攻防が続き、相手の連続得点で9-10とリードされていた。
木「連続で取られた時の切り替えだけ大事にしていこう!そこだけだから!」
荒「A、ライトからのスパイクはクロスだけに絞るよ!ストレートはコトに任せて!」
花「了解です!」
ドミニカの最長身のブライエリンに、チーム内でも長身の二人のブロックで対抗する。きっと相手もブロックを避けてくるはず。
"木村のバックアタック、これをブレンダが確実に上げます。トスはブライエリンに上がった!"
作戦通り、エリカさんとクロスを締めて飛ぶ。
それでも、ブライエリンの高さには届かないと瞬間的に分かった。
彼女のジャンプが最高に到達した時、視線が見えた。
ストレート、見た。
真上に伸ばしていた両手。
左手一本、ずらした。
330cmの高さからのスパイクはそのままストレートに打ち落とされる、はずだった。
"止めたぁぁ!花井が、ドミニカのエースを左手一本で止めましたぁぁ!"
座「Aナイスブロック!」
花「すみません!つい反応しちゃいました!」
止めたからいいよ!とコトさんに背中を叩かれる。この一点で私は後衛に回る。
"日本10-10と追いつきました!ここでサーブは、花井です!ここは何としてもブレイクしたいところ!"
フルセット、しかもお互い譲らない試合展開。
体力は結構使ってきた。
監督からはGOサインが出る。
高く上げたトスを、全力で打ち込んだ。
しかし、それをブレンダが上げた。
世界一のリベロは簡単には決めさせてくれない。
そのままトスはブライエリンに上がり、彼女のスパイクはコトさんの腕を弾いた。
ボールはコート真横の関係者席へ。
いや、間に合う!
無意識に伸ばした手はボールに届き、コート上へと返った。そのまま私は何かにぶつかり周りも見えないまま、雪崩れ込んだ。
"花井渾身のカバー!それを宮下が返した!"
椅子なのか人なのか、よく分からないまま押し除けてコートに戻る。そして、そのプレーは相手スパイクのアウトでこちらの得点となった。
"日本ブレイク!魂のプレーで繋ぎました!"
"審判が止めました...花井選手が何か言われてますね"
花「え、なに...」
宮「A、血が!」
少し痛む額を抑えて見ると、掌に血が付いていた。
"先程ベンチに飛び込んだ花井ですが、出血しているようです。これは交代せざるを得ません"
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作者名:松野 | 作成日時:2019年11月16日 21時