Flowerwall-2- (ページ19)

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Side Yuki.

街に繰り出せば、クリスマスソングがそこら中で流れている。俺の隣を歩く彼女も口ずさんでいる。相変わらず英語の発音は綺麗だし、歌も上手い。

花「あ、すごい！クリスマスツリー！」

スマホを取り出すAさんの髪が揺れる。
いつものストレートとは違って、緩く巻いてある。
今日は特別に、と言っていた。彼女も今日を特別だと思ってくれている証拠に、思わず笑みが浮かぶ。

花「あっちのクリスマスは見れないんだろうなー」

天皇杯が終わり、告げられた。
今度は、俺も過ごしたイタリアへ留学すると。
何ヶ月も秘密裏に準備してきていたという。

その前に、一年前からしていた、クリスマスを一緒に過ごすという約束を果たしてもらった。

クリスマスマーケットやイルミネーションを見て、インドア派な俺達は早々に疲れてしまい、夕食をとって帰ることに。カジュアルなレストランを出てAさんに正直に言う。

石「...外泊届け、出してきたんだよね」
花「は」
石「だから、泊めて？」

そういう反応は予想していた。
彼女は一切喜ばなくて、困った反応だ。
だって俺達は付き合ってないから。

本当は思いが通じ合えばそれでいいけど、お互いに最優先はバレーだ。それを理解しているからこその曖昧な関係。手を伸ばせば届く距離感は、お互いがもういいと決めたいつかのタイミングで変わる、そうだといいなと思ってる。

花「...そういうの良くないなぁ」
石「少しでもAさんといたい」

この人はイタリアに行って、次会えるのはずっと先、代表に再び召集された時だろう。
それにそれからは遠征やリオの予選で互いに出ずっ張りだ。
困ってても、押されると弱い事を知ってる。俺はずるいと分かってて引かない。
無言の睨めっこが続き、負けたのは彼女だ。

花「...わかった」

観念した彼女の家へ。
オランダの時とは違う、実際に彼女が息づいて暮らしている部屋だ。
リビングに飾られた絵が目に入った。

石「この絵、オランダの時にも飾ってたよね。お気に入り？」

うん、と頷く。
天性のバレーセンスを持つ彼女が、異国の地で初めてぶつかった壁、その話をしてくれた。

花「試練も絶望も、花として咲くように。今後何が起きるか分からないけど、全部希望に変えれる気がする。お守りみたいなものだよね」

そう言って笑う。
スマホを取り出し、一枚写真を撮る。
花の壁と、それに微笑む彼女を。

石「俺も、そのお守りにあやかろうかな」

花「ん？いいよ？あやからせてあげる」

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